清宮時代にトップリーグで覇権を争う強豪に成長したヤマハ発動機だが、堀川新監督は〝清宮流〟に新たな武器を融合させる。
「ここまで取り組んできたセットプレー・ラグビーは、もちろん今季もわれわれの強みです。これはマストなんです。でも、そこにアンストラクチャーなラグビーを入れていきたい」
9季ぶり3度目の指揮を執る堀川監督は、日本代表を率いるジェイミー・ジョセフ・ヘッドコーチのもとで、代表候補らを鍛えるNDS(ナショナル・ディベロップメント・スコッド)でもコーチを務めた。その経験をチームにも還元して、代表が取り組む〝アンストラクチャー・ラグビー〟をミックスしたスタイルを目指す。
指揮官自らが認めるように、ヤマハといえば強力なスクラムなどセットプレーを起点に戦うのが伝統だ。アンストラクチャーとは対照的な、しっかりと準備された〝決め事〟で試合を進めるのがセオリーだったが、堀川新監督は「アンストラクチャーな状況の中に(決め事を)落とし込む、ストラクチャー化していくということです」と自信に満ちた笑顔で語った。
たとえばアタックでは、キックを使うなど昨季まで以上に戦術が崩れた状況を作り出す中で、しっかり自分たちの〝決め事〟を挟み込んでいくイメージだ。いままで以上に状況判断や、臨機応変さが求められそうだが、同指揮官は「大丈夫です。トップリーグ開幕まで、まだ7か月ありますから」と不敵に笑った。ワールドカップ日本大会の開催で異例の年明け開幕となる日程を最大限に活用して、新たなスタイルの構築に着手している。
6月15日に行われた東京ガスとのトップリーグ・カップ戦前唯一の練習試合には、7人の新人、移籍選手を先発で起用。
PRの岡本慎太郎(帝京大)、土山勇樹(法大)のルーキーコンビがスクラムで相手に受圧をかけ、フィールドプレーでもトライに繋がる防御突破を見せるなどデビュー戦から存在感をアピール。豊田自動織機から移籍したSOサム・グリーンも、この試合では手堅いプレーに終始したが、持ち味のラインアタック、戦術的なキックと、新スタイルに必要なプレーでレギュラーの座を狙う。 (吉田 宏)