6月9日、関東大学春季大会で最上位のグループAで3敗の慶應義塾大学は、同じく3敗の大東文化大学を43-12で下して大会初勝利。
大会初先発でキッカーも務めたSO中楠一期(1年)は80分間出場。自身の1トライを含む、計7トライの快勝に貢献した。
「最初3トライしましたが(コンバージョンキックを)外してしまい、なかなか点差が開きませんでした。僕がうまくボールを運んでトライを取らなきゃいけないな、という思いがありました」(慶大SO中楠)
開始から3連続トライのコンバージョンはいずれも外れ、リードは15点に留まった。前半31分、大東大が優勢のスクラムからNO8佐々木剛主将が持ち込むと、慶大のリードは8点(15-7)に縮まった。
するとSO中楠はその3分後、相手キックの捕球から巧みに抜け出し、ショートキックとドリブルを織り交ぜインゴールへ。
ミスを取り返すべく奪ったチーム4トライ目は、豊富な経験を感じさせる技アリのトライだった。
「ラグビーは幼稚園の年少からです。小学校まで田園ラグビースクールで、中・高は國學院久我山です」
174センチ、81キロ。東京・國學院久我山でのラストシーズンは、第1地区決勝で早稲田実業に19ー43で敗れた。
花園出場校にはなれなかったが、SOとして高校日本代表に。もう一人の代表SOは、花園初優勝を遂げた大阪桐蔭の高本幹也(帝京大)だ。
高本と同じくセンターでもプレーできるが、適性の自覚はハッキリしている。
「(高校まで)スタンドオフとセンターがメインでした。違う楽しさがあるので、どちらも好きですが、10番の方がフィットしているかなと思います」
慶大は昨季まで古田京が絶対的な司令塔。創部120周年の新10番に注目が集まるなか、就任初年度の栗原徹ヘッドコーチのもと、チームはよりスペースを意識したアタックを志向している。
「ワイドに動かすというよりは、スペースのあるところにボールを出そうとしています。スペースが近いところにあれば、近場で当てていく、という考え方です」
快勝を締めくくる後半最後のトライは、流れの中でFWとリンク。巧みにチームのトライをアシストした。
随所に黒黄ジャージーにふさわしい好タックルも見せ、43ー12の勝利に寄与。ただ本人の自己評価は控えめだった。
「僕としては50点くらいです。全体的なボールの動かし方、考え方は良かったのですが、僕のスキルの部分でミスがあり、そこで苦しくなった部分もあったので、もっと練習しなければいけないなと思いました」
まだ大学1年の6月。100点のパフォーマンスを見せる舞台はこれからだ。