今年3月にニュージーランド南島のクライストチャーチで発生したモスク(イスラム礼拝所)銃乱射事件を受け、チーム名の変更について議論を重ねているクルセイダーズだが、少なくとも来季のスーパーラグビーは、いまのチーム名のままで参加することになりそうだ。
ニュージーランドラグビー協会チェアマンのブレント・インピー氏が6月8日のラジオ番組で、「2020年にクルセイダーズの名前が変わることはない」と語った。
クルセイダーズは事件があったクライストチャーチを本拠地とし、そのチーム名は「十字軍戦士」を意味する。十字軍とは、11世紀末から13世紀にかけて、キリスト教の十字を掲げてイスラム教徒と戦った軍隊の称号で、51人が死亡した今回の事件の実行犯が使用した銃には十字軍の歴史上の人物の名が書かれていたといわれており、クルセイダーズというチーム名について批判や懸念の声が上がっていた。
クルセイダーズは地元のイスラム教徒コミュニティーなどと協議しており、将来のチーム名変更の可能性がなくなったわけではないが、ニュージーランドメディアの『Radio Sport』によれば、インピー氏は「現実的には、アディダス(スポンサー)がジャージーを製造しなければならなくなり、商品化やその他にも影響が出る。既存の契約がある場合は、プロチームの名前を変更することはできない」とラジオ番組で語り、「クルセイダーズの名前が2020年に変わるという意図はまったくない」と明言したという。
クルセイダーズは1996年に、ニュージーランド南島の中央部から北部に位置するカンタベリー地方やマールボロ地方などの各ラグビー協会所属選手を中心に編成されて誕生し、ニュージーランド、オーストラリア、南アフリカ、アルゼンチン、日本のチームが競うスーパーラグビー(アルゼンチンと日本のチームは2016年から参加)において最多9回の優勝を遂げている名門。数多くの世界的スターを輩出し、ニュージーランド代表主将としてワールドカップ連覇を遂げたリッチー・マコウ氏や、現在、神戸製鋼コベルコスティーラーズに在籍しているスーパーラグビー歴代最多得点者のダン・カーター選手もクルセイダーズのOBである。
2021年以降にクルセイダーズのチーム名が変わるかどうかは未定だが、事件発生以前にホームゲームの試合前におこなわれていた演出、十字軍騎士に変装した数人が馬に乗って刀を振り回しながら場内を一周するパフォーマンスは、イメージが悪くなり現在はおこなわれておらず、クルセイダーズは名前を変えないにしてもブランドの刷新が求められている。