ラグビーリパブリック

セブンズに人生を懸ける。野口宜裕、フランス大会での出番を熱く待つ。

2019.06.01

170センチ、77キロ。キレのある動きで勝負する。(撮影/松本かおり)



 のるかそるか。勝負の週末がやってきた。
 HSBC ワールドラグビー セブンズシリーズ2018-2019 第10戦(最終戦)フランス大会が、6月1日〜3日、パリで開催される。
 2018-2019シリーズにコアチームとして参戦している男子セブンズ日本代表の今季通算順位は15位。フランス大会を終えた時点でその順位が変わらなければ、来季は同シリーズに常時出場することができなくなる。
 総合ポイント=25の日本に対し、14位のケニアは27点で13位のウエールズは30点。今季最後の舞台で逆転し、来季もこのレベルで競い合いたい。

 前週のイングランド大会では目標であるトップ8入りを逃し、2日目初戦(チャレンジトロフィー準々決勝)のウエールズ戦にも敗戦。しかしケニアに勝ち、最終戦ではイングランドを破って13位となった。
 同大会を戦った選手たちを軸にフランス大会を戦うメンバーも構成され、その顔ぶれは下記の通りだ。
1 トロケ マイケル、2 トゥキリ ロテ、3 中澤健宏、4 羽野一志、5 副島亀里ララボウラティアナラ(C)、6 小澤大(C)、7 坂井克行、8 松井千士、9 藤田慶和、10 橋野皓介、11 加納遼大、12 本村直樹、バックアップ=野口宜裕

 フランス、ニュージーランド、スコットランドと同じプールDに入った日本。トップ8に入るためにも、初日の初戦からすべての力を出し切りたい。2日目以降が総力戦となるのは必至だ。
 そんな状況の中で出番が回ってくるかもしれないのが13番目の男、野口宜裕(のぐち・よしひろ)だ。今回のイングランド、フランス遠征メンバーにはもともと名前がなかったが、負傷者の発生により、急遽フランス大会に向けて合流。スクランブル発進に備え、万全のコンディションを整える。

 野口は専修大3年だった2017年秋のアジア・セブンズシリーズで日本代表に初めて選出され、2018年4月のシンガポール大会でワールドシリーズでのデビューを果たした。
 2018-2019シリーズは第1戦のドバイ大会からコンスタントにメンバーに選出され、第8戦のシンガポール大会までに外れたのは香港大会だけ。SH、そしてスイーパーとしてチームに貢献し続けた。
 ゴールデンウイーク中の府中合宿にも参加。トレーニングマッチなどを通してのセレクションの結果、第9戦、第10戦を戦うツアーメンバーからは漏れたが、多くの舞台を踏んで伸ばした力への評価は一定のものがある。




 府中合宿中の試合では、代表側で出ることもあれば、対戦相手側にも加わった野口。3日間の戦いの中で、日本代表スコッドの中で積み上げてきたフィットネスが自分自身の財産になっていることを感じながらも、「チームに求められているプレーをもっとやらないといけない」と反省もした。
「以前と比べれば、判断や、味方とうまく連係をとってプレーする部分は高まったと思います。ただ、まだまだ足りていないところが多い。誰よりも努力して、絶対にスコッドに生き残りたいと思っています」

 東京出身ながら大阪の早稲田摂陵に学び、ラグビーと出会った。同校の藤森啓介先生、専大の村田亙監督と、自分の才能を伸ばしてくれる指導者と出会ったのは運命的出来事。お陰でセブンズへの道が拓いた。
 2017年の春に代表関係者の目に留まり、挑戦の機会を与えられてからは、2020年の東京五輪をターゲットに定めて脇目もふらず走ってきた。大学4年時(2018年度)も、同期と一緒に関東大学リーグ戦を戦いたかったが、出場は中大戦のみ。セブンズ選手として成長する時間にすべてを費やした。
 代表でプレーし続けること、世界で勝つことの難しさを体感した者として、その判断は当然だったと思っている。

 日本オリンピック委員会が実施しているトップアスリート就職支援策「アスナビ」を通じ、この秋からはセコムへ入社する予定になっているが、同ラグビー部ではプレーせず、セブンズに特化した活動を続けていく。
「自分にはセブンズしかない」の言葉は本気だ。
「来年の東京五輪のメンバーに入れなければ、メダルを獲れなければ、ラグビーは引退。それぐらいの気持ちでやっています」

 パリで出番が巡ってくるかは分からない。
 でも、巡ってくるなら勝負どころ。
 セブンズに人生を懸ける男の思いが、特別な力を発揮しそうな気がする。