いろんなところに書いてある身長は176センチも、本当は173センチほど。以前、本人がそう言うのを聞いた。
サンウルブズのCTB、FBで活躍するジェイソン・エミリー(宗像サニックス)だ。今季は先週のレベルズ戦を含め12試合に出場。そのうち10試合で先発している。
6月1日、今季のホーム最終戦を戦うサンウルブズ(対ブランビーズ)。その試合にエメリーも13番で出場する。
「いつも熱心に応援してくれているファンの前で勝つところを見せたい。これは、チーム全員の思いです」
5月25日のレベルズに敗れた後、そう話した。
チームは今季まだ2勝しただけで6連敗中。完封負けも2度あった。しかし、気持ちは前向きなままだ。
レベルズ戦のスコアは7-52。その前週のブランビーズ戦は0-33だったから、後半23分に奪ったトライは狼軍団にとって久々の得点だった。
すでに大差(0-31)がついていたため勝敗に影響を与えるものではなかったが、ピッチを見つめたファンは沸いた。
インゴールにボールを持ち込んだのが背番号13、小柄なミッドフィルダーだった。
エメリーが、そのシーンを思い出す。
インサイドから加速して走り、レベルズのCTBリース・ホッジが手にしたボールを蹴った瞬間に跳んだ。キックチャージに成功し、弾んだ楕円球を自ら拾い、走った。
狙っていた。
「ホッジは大きい(191センチ)。僕は小さい。その高さの差がちょうどよかったのかもしれない」というのは冗談だ。
「レベルズにとっては自陣深くからのキックでした。距離を出すキックが必要だから、ハイパントより低い弾道で蹴ると分かっていた」
チームにとって2試合ぶりのトライは、自身にとって今季初トライだった。
「私にとってはサンウルブズで、初めて秩父宮ラグビー場で決めた初トライです」
昨季の自身が挙げた1トライは、アウェー戦でのものだった。
ホームのファンから届く歓声は、やっぱり気持ちいい。
NZ・タウランガ生まれ。父・クリーブンさん、母・タニアさんともマオリの血を引く。
同地で5歳まで過ごし、ウエリントンへ。10歳でパーマストンノースに移った。楕円球を追い始めたのは8歳の頃。ジョンソンビルクラブに入った。
「最初から小さい体なので、大きな相手と戦うための工夫を特に意識したことはありません。ただ、小柄なのだからスキルが高くないと戦えない。完璧なプレーをしないとやられてしまう」
そう話す男は、州代表にも選ばれたことのあるタッチラグビーをはじめ、バスケットボール、クリケット、テニス、バレーボール、バドミントンをプレーすることでバランスよく体力と感覚を伸ばし、トッププレーヤーに育った。
シーズンを通してクオリティーの高いプレーを発揮できるのは、土台がしっかりしているからだ。
6月1日のブランビーズ戦、チームはボールを保持し続け、自分たちのスタイルを貫くことで勝利を手にしようと思っている。
小柄だが研ぎ澄まされた13番にかかる期待は大きい。先週のプレーヤー・オブ・ザ・ウイークに選出されたテヴィタ・クリンドラにら相手のCTBも好調だが、エメリーが攻守で目立つなら、秩父宮ラグビー場が沸くシーンも増えそうだ。