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決勝は7年連続「学芸大 vs 一橋大」に 第67回東京地区国公立大学体育大会

2019.05.27

学芸大HO岡田が自身2本目のトライを奪う(撮影:見明亨徳)

 都内の国公立大が覇権を競う「第67回 東京地区国公立大学体育大会」は、5月26日に準決勝2試合がおこなわれ、連覇を狙う東京学芸大が首都大東京を68-14で一蹴した。もうひとつの試合は学芸大リベンジを誓う一橋大が東京工業大を後半逆転し、32-15で退けた。
 決勝(6月9日)は7年連続同じ顔合わせとなった。

■『学芸大はブレークダウンで圧倒』

 昨年王者・学芸大が東京大棄権で準決勝へ進んだ首都大東京をアウェーで圧倒した。
 昨年度は「第69回全国地区対抗大学大会」でも5年ぶり2度目の優勝を勝ち得た。昨年の主力メンバー4、3年生が残る学芸大。この日も先発FW5人、BK6人は全国大会決勝の先発メンバー。リザーブだったFW、BK1人ずつも先発した。

「今年は国公立大会、全国地区対抗の2冠2連覇が目標」と岩本悠希監督。春シーズンから全力を出し切る決意で臨んでいる。

 前半から学芸大ランナーがボールを持つとゲインを次々と切った。サポートも良く首都大ディフェンスはスローな展開にできない。
 8分、学芸大が敵陣、左ラインアウトからつなぎゴール前へ。ラックのボールを手にしたHO岡田陸斗(4年、桐蔭学園出身)が最初のファイブポインターとなる。10分、リスターのボールをそのまま持ち込みLO安達拓海(2年、桐蔭学園出身)が高校先輩に続く。安達は全国大会決勝で逆転トライを奪ったランナー。
 このあとも17分以降、首都大ボール(ラインアウト、スクラム)からのターンオーバーなどで3連続トライし、早々と33-0とした。
 前半終了前、ようやく学芸陣に入った首都大は相手反則を連続でもらい、最後はLO吉富亮太郎(3年、小倉高出身)が仕留めた。

首都大は前半終了前にLO吉富が5点を返した(撮影:見明亨徳)

 後半は、ブレークダウンで学芸大が次々とターンオーバーする。1分のSO熊谷颯斗(3年、秋田高出身)を始めに18分、24分、28分と後半5トライ中、ターンオーバーで4本奪った。
 首都大の反撃を1本に抑え68-14と一蹴した。「ブレークダウンで仕留める練習を積んできた。きょうは首都大がラック周辺でアタックしてきたので効果が出た。本来はボールを外に動かしたかったが、少し付き合ってしまった。安達も外で生きる選手です」(岩本監督)。
 首都大を教える岩崎誠コーチ(元中央大監督)は、「見ての通りコンタクトスキルで負けた。(所属する)関東大学リーグ戦3部の上位校にも負けるレベル。これから」と秋を見据える。

■『一橋大、残り15分で生き残る。東工大主将は悔し涙』

 学芸大快勝の話は一橋大グラウンドに入っていた。
「去年、最後のところで負けた(29-34)。先輩たちの借りを返す」。一橋の司令塔SOで主将、堀内芳輝(4年、愛知高出身)は、この試合はリベンジへの一課程だった。
 しかし、決勝への思いは東工大の方が強かった。前半開始9分、先制は東工大。一橋ゴールへモールで迫ると、エースランナーのアウトサイドCTB早舩晃希(3年、桐光学園出身)がインゴールへ運んだ。3分後、モールをそのまま押し込み左PR大島義人(3年、加茂高出身)が仕留める。22分には一橋陣10メートルライン内で反則をもらう。FB落合翔悟(4年、市川高出身)がPGを正確に決め、15点をリードした。

花園経験をいかす一橋大のルーキーFL島田(撮影:見明亨徳)

 一橋大は敵陣に入るも点を取れない状況が続き、プレーに焦りが出始める。
 ルーキーのFL島田耕成。昨年度の全国高校大会東京都代表で花園の土を踏んだ本郷高の主将、難関の受験を突破して希望を成し遂げた大物新人もPKからタップで進もうとするもノックオンをしてしまう。「公式戦デビューでした。80分間の試合も初めて。受験を終えてフィジカルなど戻ってきています。早く環境に慣れたい」。試合中、セットプレーで指示を出すなど「発信力がすごい。頼もしい存在」(堀内主将)、チーム内でポジションを築いている。
 ようやく27分、CTB佐々木勇気(3年、国立高出身)がゴールラインを越えた。5分後、佐々木はPGも決め10-15と後半への期待をつないだ。

一橋大はCTB佐々木がようやくトライで反撃を始めた(撮影:見明亨徳)

 後半開始から一橋大が攻めるも、ここでも東工大ディフェンスが粘り強く止める。
 点が入ったのは28分。自陣左スクラム起点でつなぎ右WTB菅原寛也(4年、宇都宮高出身)が小気味よくステップを繰り出す。東工大ディフェンスを抜き去り右中間へ飛び込んだ。コンバージョンも決まり17-15と試合の主導権を握った。
「焦りがなくなった」と堀内主将の話す通り、選手が躍動を始めた。2連続トライに最後はPGで15点を追加し、32-15で挑戦権をつかんだ。

「自分たちのラグビー、ディフェンスからボールを奪いチャンスへつなげる。ここは変えないでいきます」(堀内主将)。学芸大戦まで2週間、スタイルを強化する。

 試合後の円陣、東工大では首脳陣が「自分たちの判断ミスで勝ちを逃した」と指摘した。円陣がとけるとWTB柳井優作主将(4年、川和高出身)の目は涙で充血していた。
「前半、リードできたまでは良かった。その後でミスで自分たちの流れを作ることができなかった」

ラックへ入る東工大主将、柳井。試合後、悔し涙を流した(撮影:見明亨徳)

 ラグビーと学業、国公立大で後者を中心の大学生生活を選択した選手たち。それでも悔しいときは涙を流し次への成長を誓う。
 準決勝の前日、この国の唯一のプロチームは13,600人のファンが詰めかけたホーム秩父宮ラグビー場の試合で大敗した。しかし悔しい表情、涙を浮かべるプロ選手は皆無。楕円球への思いは一橋大グラウンドの方が強かった。

 決勝戦。学芸大、一橋大の両校は2013年以来7年連続で同じ舞台へ。過去6年の戦績は学芸大4勝、一橋大2勝。学芸大は2010年以後も東京海洋大と3年連続で覇を競い3連勝している。