先のことはどうなるかわからない。でも、いまやるべきことなら明確だ。
男子セブンズ(7人制ラグビー)日本代表の小澤大主将は、現在は2020年のオリンピック東京大会を視野に入れつつ日々を誠実に過ごしてゆきたいとする。
4月23~28日、5月6~11日は、セブンズ日本代表候補らによる男子セブンズ・デベロップメント・スコッド(SDS)府中合宿に参加(東京・府中朝日フットボールパーク)。ひとつめのキャンプでのテーマが「自分と向き合う」だったのに対し、ふたつめでのそれは「チームと向き合う」だった。
「(選手は)練習の入りの部分で(意気込んで)やろうとしてくれているけど、チームに向き合えなかったところがあった」
ふたつめのキャンプが大詰めを迎えつつあった9日、目標と現状との違いについて正直に明かす。具体的には。
「疲れると、周りに目を向けられなかったりしました。そうなると、自分勝手なプレーにつながる。どんな時も広い視野でやらなきゃいけない」
チームは現在、国際サーキットのセブンズワールドシリーズに参加中。常時出場できるコアチームに入ったのは2季ぶりとあって、苦戦を強いられる。
7戦目にあたる4月5~7日の香港大会では、コアチーム残留を争う対象国に勝つなどし16チーム中10位で終える。しかし同13~14日にあった8戦目のシンガポール大会では、16チーム中15位タイ(最下位)。サーキット全体での順位は降格対象の15位で、通算22ポイント。14位のウェールズ代表を3ポイント差、13位のケニア代表を4ポイント差で追う状況だ。
このアジアの2連戦では、最大の課題とされていたキックオフでの自軍ボール確保について「(香港よりシンガポールの方が)獲得率も上がりました」としながら、「(試合の)前半の獲得率は悪い部分があった」。何より勝敗を大きく分けたのは、選手のマインドだったと指摘する。
「正直、2大会持たなかったという選手もいたと思いますし、メンタル的にも来ていた、ただ言い訳はできない。他のチームも同じです。自分たちのラグビーができなかった。そこが、敗因です」
今度のSDSは、残る5月25~26日のロンドン大会、6月1~2日のパリ大会のための貴重な準備期間でもあった。
チームには2016年のオリンピック・リオデジャネイロ大会で4位入賞したメンバーが続々、復帰している。小澤は「経験者は重要な存在ですが、いままで選ばれてきた選手も劣っていない」とし、「競争が生まれているのはポジティブですが、まだまだ満足していない。敵は自分たちではなく世界なので、競争力を生みたい」と続ける。
フォーカスポイントが明確だからだろう。SDS合宿では練習の冒頭からキックオフの練習をしたり、フィットネスの合間に実戦形式のメニューを加えたりと、いかなる状況下でもプレーの質を保つためのセッションを重ねた。昨年6月就任の岩渕健輔ヘッドコーチ(HC)が掲げる、「蜂のように動き回る」という方針も変わらずに貫く。起き上がりのスピードにこだわる。
オリンピックでのメダル獲得という大目標を掲げながら、いまの戦いにのみ視線を注ぐのだ。
「セブンズは経験がものをいうので、その経験の場がないといけない。(そのため)メダルを獲るにはワールドシリーズ残留が前提です。まず、残留。その後も(オリンピックに向けた)強化はできると思います。まずは目の前の大会に100パーセント、臨む。オリンピックではメダルを獲ろうという目標がありますが、その前に(継続的に)世界と戦っておかないと」
身長183センチ、体重89キロの30歳。籍を置くトヨタ自動車が愛知県で15人制をおこなうなか、現在の小澤は日本協会と7人制専任契約を結んで都内に拠点を置く。代表活動のない間も、都内の国立スポーツ科学センターでトレーニングに励む。
オリンピック後も選手生活を続けたいとするが、ナショナルチームでのレガシー継承のため7人制日本代表での再選出を目指すか、支援し続けてくれたトヨタ自動車への恩返しのために愛知に戻るか、はっきりとは決めていない。
「先のことも、ちょっとずつは考えていかなきゃいけないと思いますが……」
どうなるかわからない先のことも気にならなくはないが、まずは、いまやるべきことに集中する。