羽野一志は、昨年までは2019年の15人制ワールドカップ日本大会出場を目指していたが、現在は2020年のオリンピック東京大会での男子7人制(セブンズ)日本代表入りを目指す。2016年の同リオデジャネイロ大会ではニュージーランド代表を破るなどし、4位入賞。今度は、メダル獲得の力になりたい。
5月6~11日は、セブンズ日本代表候補らによる男子セブンズ・デベロップメント・スコッド(SDS)府中合宿に参加(東京・府中朝日フットボールパーク)。現在の公式サイズを「身長183センチ、体重85キロ」とする27歳は、NTTコムのラグビーマンでもある。
今後はNTTコムでの15人制の活動より、セブンズ日本代表としてのパフォーマンス向上に努めることとなりそう。もっともその方針を、NTTコムはバックアップしてくれそうだ。羽野は、ジョークを交えて言う。
「えーと、(セブンズへの専念に対し、会社は)僕よりも前向きだったんじゃないかな。会社はオリンピック東京大会のゴールドパートナーでもあるので、『うちのチームからもオリンピックを狙える選手を出したい。(代表活動に)行ってくれないか。逆に、行ってくれ』と言っていただいた。セブンズにしっかりとフォーカスしていきます!」
7人制日本代表に復帰したのは今春から。国際サーキットのセブンズワールドシリーズには、4月5~7日の香港大会から加わる。
ここ数年注力していた15人制といま専念している7人制は、試合時間やスケジュールの違いなどから「似て非なる競技」とも言われている。そのため羽野も、これまでの感触を「まだ慣れていないなぁという印象が強い」と吐露。特にタックラーと接触する際、勝手の違いを感じるようだ。
サポートプレーヤーが近くにいる15人制であれば、1メートルでも前進してラック(ボール保持者が倒れた接点)を作れば御の字とされる。ところが選手同士の間隔が広い7人制で同じことをすると、どうしても相手にボールを奪われやすくなる。倒れ込む前にパスを放るなどの「ボールを逃がす」との意識を、いち早く植え付けたいと話す。
「(ワールドシリーズでも)ボールに絡まれる場面があった。修正してきたい」
チームは香港大会こそ16チーム中10位で終えるも、同13~14日のシンガポール大会では16チーム中15位タイ(最下位)と沈んだ。残る5月25~26日のロンドン大会、6月1~2日のフランス大会でコアチーム(ワールドシリーズに常時参戦できる15チーム)残留を目指すが、現在は22ポイントで降格対象の15位に位置。14位のウェールズ代表を3ポイント差、13位のケニア代表を4ポイント差で追う。羽野はこうも語る。
「(チームは)香港大会でポイントを取って『しっかり次の大会も』と臨んだのですが、試合展開のなかで最初のキックオフでボールを捕られたり、(点を)取り切るべきところで取り切れなかったり、我慢すべきところで失点したりというのが目立った。日本の強みは走り勝つこと、ボールキープです。自分たちがミスをしてしまうと、それも始まらない。ミスはなくしていこうと話をしました。(今後は)セブンズに慣れていきたい」
課題克服のためか、SDS合宿では練習の冒頭からキックオフの練習をしたり、フィットネスの合間に実戦形式のメニューを加えたりと、いかなる状況下でもプレーの質を保つためのセッションを重ねた。昨年6月就任の岩渕健輔ヘッドコーチ(HC)が掲げる、「蜂のように動き回る」という方針も変わらずに貫く。
「タックルして、起き上がる。オフロード(敵につかまれながらのパス)をして、すぐに起き上がる。そして次のプレーに参加する……。そういう練習に取り組んでいます」
リオデジャネイロ大会に臨んだ瀬川智広HC時代といまとの相違点については「瀬川さんの時は、『ここはこう、ここはこう』と細かいところまで(首脳陣が)いろいろと決めてゆく感じ。いまは選手がいろいろなことを決める、自由な印象を受けます」と言及。逆に共通点を挙げるとしたら、タフなトレーニングを課すことだろう。羽野も認めた。
「瀬川さんの時も相当、きつかったですけど、岩渕さん(の体制)も走りまくります」
代表活動がない時は、千葉にあるNTTコムの練習施設で身体を動かす。「来るなとは、言われてないです。フフフフ!」とおどける。最後はメダル獲得へ向け、真摯な言葉を残す。
「リオでは、セブンズ日本代表としてはいい結果を出せた。でも、メダルを獲るのと獲らないのとでは違う。次こそはメダルを目標にする。1回オリンピックに出ているのと出ていないのとでは違うと思うので、リオでの経験を活かせたらと思います」