ラグビーリパブリック

明大は、山沢京平の10番を試運転。田中澄憲監督は「いいラインが構成できる」と期待。

2019.05.06

昨年度の大学選手権決勝はFBで先発した山沢京平だが、今年度はSOでの起用も(撮影:松本かおり)

雷雨中止となった関東大学春季大会Bの明治大×青山学院大戦(撮影:向 風見也)

 5月4日、東京・明大八幡山グラウンド。22年ぶり13回目の大学日本一に輝いた明大ラグビー部は、関東大学春季大会Bグループの2戦目で青山学院大と激突した。序盤からスコアを重ねて36-5とするも、試合途中から雷雨に見舞われ前半30分過ぎに中断。主催の関東協会の判断でノーゲームとなった。再試合がおこなわれるかは未定。

 明大の田中澄憲監督は、安全面を考慮した決定を「正しい判断だった」としながら、「試合をやらせてあげたかった」とも続ける。この日はHOの武井日向主将ら4年生のレギュラー候補を欠場させ、控え組に主力チームでのプレーを経験させるつもりだったのだ。

 もっとも、ただ中断を受け入れるだけではなかった。出場が予定されていたリザーブの選手を寮内のトレーニングルームへ戻し、特別メニューを課したという。チームをタフにした指揮官は、その様子を前向きに捉えた。

「これから2日間オフになる。(もしきょう身体を動かさなかったら)3日オフということになってしまうので。ここは、選手も嫌がらずにやれるようになった」

 試合での注目点は、山沢京平がSOでプレーしたことだろう。

 ボディバランス、視野の広さ、キック力を長所に、埼玉・深谷高では2年時から高校日本代表入り。明大でも1年時から先発出場を重ねた看板選手だ。かねてSOを任されてきた現パナソニックの兄・拓也に対し、弟であるこの人は最後尾のFBを本職としてきた。3年目の今季は、新たなチャレンジをする格好である。

 高校時代にも経験した司令塔の位置で、本人は「ボールタッチの回数も増える」と喜ぶ。パスで大きくボールを動かしながら飛び出す防御の裏へキックを放ったり、自陣からFWのユニットを自在に操ったり、攻防線と近い位置で球をもらって味方をスペースに走らせたり。攻撃的な姿勢で得点をおぜん立てした。

「相手がこういうディフェンスしてきたからこうする、ここが空いているからボールを運ぶといったコミュニケーション、状況判断のところで、FBと(役割が)違う。楽しいです。どうやって(ボールを)動かしていくかという難しさはあるけど、やること自体(防御に近い位置で球をもらうこと)への難しさは特に感じていないです」

 10番のSOでの山沢起用について、田中監督は「能力が高い。ランもキックもある。相手にとって嫌な10番になる可能性がある」と説明する。今季はレギュラー格のSOだった松尾将太郎、忽那健太が卒業し、4年の1軍経験者である二浦瑞樹と定位置を争うタレントが求められていた。一方、15番のFBでは、サイズに恵まれた2年の雲山弘貴が頭角を現している。今度のコンバートは、山沢とチームの両方を進化させうると田中監督は考える。

「山沢が10番に入ることによって、雲山を15番で使えます。トータルで見た時、いいラインが構成できるんじゃないかと。二浦も計算ができ、いい10番が2枚いればチームとして強みになります」

 チームは春季大会と並行し、一昨季までの大学選手権で9連覇した帝京大や、前年度の大学選手権準決勝を戦った早大などとも招待試合をする予定。指揮官は「いまの段階ではフォーカスしていることはできていますけど、強度の高い試合でどんなプレーができるかはこれから」と、前向きかつシビアに現状を見る。さらにはこうも言う。

「プレッシャーのかかったところで厳しいプレーを選択できるかが、彼(山沢)のこれからの課題になります。ここは、経験を積むしかないところ」

 今後は上位チームとの対戦でも、山沢に10番を任せそうだ。

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