ラグビーリパブリック

梶原宏之新監督への思いは7年ごし。山梨学院大・磯部尚輝主将の喜びと覚悟。

2019.05.03

ジャパンのPR、稲垣啓太似の磯部尚輝主将。(撮影/松本かおり)



 もう叶わないと思っていたことが実現したから驚くやら、嬉しいやら。
 山梨学院大ラグビー部の今季キャプテンを務める磯部尚輝(4年/WTB・FB)だ。ラストイヤーは日頃からよく走り、練習はきつくなったけれど、みんな明るい。充実感漂ういまのクラブの雰囲気が好きだ。

 今季から新しく梶原宏之監督がチームの指揮を執っている。
 日本代表として世界の舞台で活躍した実績がある(キャップ31)。高校ラグビー界での指導経験も豊富で(桂、日川を率いて花園に7度出場)、ユース代表とも関わってきた。そんな経験を持った人が自分たちの先頭に立つことになって、選手たちは活気づいている。

 その中でも、磯部主将には特別な感情がある。
 小学4年生のときに都留ラグビースクールで楕円球を追い始めてから12年。ジャパンのPR、稲垣啓太に似ていると言われる主将が、高校時代のことを思い出して笑う。
「中学生の時、当時日川高校の監督だった梶原さんに誘われ、受験、進学したんです。でも、梶原さんは僕の入学と同時に転勤になった」
 教わりたかったのに…残念だった。

「(年齢的に)実際にプレーを見たことはありませんが、ワールドカップでトライを取るなど(1991年大会のアイルランド戦、1995年大会のNZ戦)、梶原さんの日本代表での活躍を知らない人は山梨にはいません。日川の監督時代には、走るチームを作っていた」
 自分もその指導を受け、全国でも上位にいけるチームの一員になりたいと思っていた。しかし、花園出場は成っても、そこまでだった。

 高校入学時から数えて7度目の春。学生生活最後の年、憧れていた人の指導を受けられるようになったのは幸運だった。
 教育委員会に勤務していた梶原監督が公務員の職を辞し、指導の現場に戻ることを決断したからだ。
「きつい練習を、明るい雰囲気の中でやれるように指導していただいています。ザ・監督、という感じの存在感です。これまで以上に、チームにはビシッとした空気が流れている感じです」

 チームは2015年度のシーズン以来関東大学リーグ戦1部から遠ざかり、入替戦への進出も2016年度、磯部主将が1年生のときが最後。最近は2部の中位に沈んでいる。
 主将は、その原因のひとつを「規律の緩み」と感じていた。
 遅刻。掃除など、それぞれに任された仕事をサボる者もいた。
「そういったものが試合中に反則をすることにつながっていたと思います。でも、いまは、それが改善されつつある。日常から変わらないといけないと思っていました」
 力がある選手は少なくないのだから、内面から変われたらやれる。そう思っている。

 今季は3年生のHO延山敏和(御所実)と共同主将制を採り入れた同部。磯部主将は「延山とは寮の部屋も一緒でしたし、考え方も似ていますからやりやすい」と話し、続けた。
「大所帯ですし、自分たちの次の代が上のカテゴリー(関東大学リーグ戦1部)でも戦っていけるように、いまのうちからリーダーを作っておくのは大事なこと」
 この春の空気を1年間続ければ、その言葉通り、後輩たちに1部昇格をプレゼントして卒業できると信じている。
 ただ、信頼できる将に黙ってついていけば願いが叶うとは思っていない。新たな指導を刺激に、自ら行動を起こし、リーダーシップを発揮する覚悟がある。

地域の多くの人たちに支えられている。(撮影/松本かおり)


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