ラグビーリパブリック

弘前から楕円球カルチャー発信。ラグビー写真展は5月4日まで開催中。

2019.05.01

子どもたちのタックルをがっちり受け止めた真壁伸弥



 プレーそのものの魅力と同じくらい、独特のカルチャーが人々を惹きつけるのがラグビーだ。
 それを伝える時間がゴールデンウイークの序盤に東北の地であった。

 女性と子どもたちに特に愛情を注ぐ弘前サクラオーバルズが設立するなど、ここ数年、ラグビー熱を発信し続ける弘前(青森)がまたも舞台だ。4月27日にはラグビーマガジン誌上で活躍する松本かおりさんの写真展『LOVE, RUGBY』が同日から現地で始まったことを記念してトークイベントを実施し、翌日には前出のサクラオーバルズが『ラグビー映画祭』を開催。同時に、ラグビートークセッションの時間も設けた。

 弘前市の土手町コミュニティーパークで5月4日まで開催される松本かおり写真展には、選手やファンの想い、ラグビーの本質が伝わってくる作品が並んでいる。
 そのオープニングギャラリートークには、松本氏をはじめ、東北出身(宮城・仙台)のサントリー、真壁伸弥選手とスポーツライターの藤島大氏、ラグビーマガジンの田村一博編集長が出席した。

 展示作品の中からピックアップされた数枚について語り合う途中、撮影者が想いを吐露したり、被写体の真壁選手がピッチ上の真実を伝えたり。その場でしか聞くことのできない話に、会場の席を埋めた来場者たちは笑い、頷いた。
 巨漢LOが、2015年ワールドカップでの南アフリカ戦のラストシーンを振り返って言った。逆転のトライの前のスクラム時、なにを叫んでいたか問われた際だった。
「自分はスクラムトライを意味する、『ST(エスティー)、ST!』と大声で叫んでいました。あの位置でのスクラムは、何度も練習していた場面。だから、当然スクラムを組むのだと思っていましたので」
 トーク後には125キロの巨漢に子どもたちがぶつかる機会も用意され、市街地のスペースが五感でラグビーを感じられる空間となった。

 1995年のワールドカップで優勝した南アフリカ代表の物語を描いた『インビクタス 負けざる者たち』、大阪朝高ラグビー部を追ったドキュメンタリー『60万回のトライ』の2作品が上映された映画祭後のトークイベントには、『60万回のトライ』の共同監督である朴敦史さんも出席し、藤島氏、田村編集長と話す中で、製作途中に触れ合った選手や周辺の人たちとの物語を教えてくれた。
 また当日は、女子セブンズ日本代表(愛称/サクラセブンズ)の中村知春主将も急きょ参加。キャプテン論やチーム愛についてだけでなく、テーマは人生論にまで及び、濃密な時間となった。

 特に映画祭の日は好天に恵まれ、弘前公園で開催中だった「さくらまつり」に向かった人も多かった。会場が満席にならなかったことからも、せっかくの機会を逃した人も少なくなかったと分かった。
 2日間の内容をもっともっと多くの人に広めたかった主催者は、「継続的にこういう場を作り、ラグビーの価値をひとりでも多くの人たちに伝えていきたい」と話す。

 サクラセブンズが合宿にやって来る。弘前サクラオーバルズも産声をあげた。雪上ラグビー大会は半世紀以上の歴史を持つ。
 弘前は、春や公園にだけでなく、街の中やグラウンドにいつもサクラと楕円球がある土地になりつつある。あとは、楕円人たちがみんなでスクラムを組み、パスをつなぐだけ。そうしないともったいない。

松本かおり写真展「LOVE, RUGBY」は5月4日まで開催(弘前市・土手町コミュニティーパーク)
和やかな雰囲気の中でおこなわれた写真展のオープニングギャラリートーク
映画祭後のトークイベントの模様。中央がサクラセブンズの中村知春主将。その右が「60万回のトライ」の朴敦史監督
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