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ワールドユース女子で日本勢がトップ3独占 福岡レディースが悲願の初優勝!

2019.04.30

いろいろな学校の選手が集まって結束し、初優勝を果たした福岡レディース(撮影:Hiroaki.UENO)

 雨となった大会2日目の「サニックス ワールドラグビーユース交流大会 2019」だが、少女たちの熱闘が寒さを吹き飛ばした。栄冠をめぐる決勝も、いちばん下の7位・8位決定戦も、みんな精いっぱいやりきって、思いがこみ上げて涙を流す選手もいたけれど、最後は互いの健闘を称えあい笑顔の花が咲いた。

 4月29日、福岡県のグローバルアリーナで女子セブンズの順位決定戦がおこなわれ、福岡レディースが悲願の初優勝を遂げた。ゴールデンウィーク期間中に同地で開催される毎年恒例のワールドラグビーユースで女子セブンズが実施されるようになったのは2013年からだが、2000年に始まった大会は記念の20回目であり、節目のメモリアルイヤーに地元チームが頂点に立った。
「福岡レディースは毎年出場してきましたが、いつもほかのチームのお祝いをしていた。地元ですし、優勝したいとずっと思っていました。そして今回、いいタイミングで優勝できた。選手たちの頑張りにつきます。よくやってくれました」
 平野勉監督は優しい笑顔だった。

 福岡レディースは前日の予選リーグで石見智翠館高校(島根)に2点差で敗れていた。試合終了間際にトライを奪い、ポスト正面のコンバージョンを決めれば同点引き分けで、総得失点差によりプールBを1位通過するはずだったが、キックは外れ2位通過で4強入り。準決勝は、ラグビー王国ニュージーランドの高校チャンピオンであるホーウィック カレッジと対戦することになった。

 自分たちに対して厳しくやろうと決勝トーナメントに臨んだ。ホーウィック戦、「相手よりフィジカルやスピードが劣っているのはわかっていたので、自分たちは組織力で挑もうと話し合ってました。チームみんなでディフェンスして、みんなでアタックして勝とうって」。吉野舞祐キャプテンの言葉どおり、意思統一ができていた福岡レディースはアグレッシブだった。体が大きい相手にプレッシャーをかけ続け、ブレイクダウンでも好ファイト、陣地獲得のキックもゲームを優位に進める要因となり、17-5で快勝した。

 そして決勝では、大会連覇を狙った石見智翠館と再戦。
 先に主導権を握ったのは石見智翠館だった。前半3分にスクラムでボールを奪い返してから速い展開で先制し、数分後にも芳山彩未が快走で連続トライを挙げた。

決勝で2トライを決めた石見智翠館高校の芳山彩未(撮影:Hiroaki.UENO)
鮮やかな走りを見せた福岡レディースの大内田夏月(撮影:Hiroaki.UENO)

 福岡レディースは最初のキックオフを失敗してフワッとした立ち上がりとなり、必死のディフェンス中にハイタックルをした選手がイエローカードを提示されるなど流れは悪かった。しかし、10点ビハインドになっても「まだいける、まだいける」とみんなで盛り上げ、7人に戻った直後、懸命につないで1本トライを奪い返した。
「前半の終わりに取れたのが大きかった。ハーフタイムに、『がまんの時間は過ぎたぞ。あとはもう自分たちのやりたいことを、楽しみたいことを思いきりやっておいで』という話をしたんですけど、その通りになった。彼女たちの気持ちの余裕が、次第に相手にプレッシャーをかけたんじゃないかと思います」(平野監督)

 すると後半開始早々、大内田夏月が自陣からダミーも入れてのしなやかな走りで大きくゲインし、サポートについていた神谷桃子が同点トライを挙げた。4分には敵陣深くに入ってつなぎ、吉野キャプテンからオフロードパスをもらった吉村乙華がインゴールに飛び込み勝ち越す。6分には、吉野の強烈なタックルにスタンドから感嘆の声があがった。福岡レディースの勢いは止まらず、7分には大内田がトライを決め、22-10で逆転勝利となった。

 敗れた石見智翠館の磯谷竜也監督は、チャレンジャースピリットで挑んできた福岡レディースの選手たちを素直に称え、自分たちのチームは若さと甘さが出たと反省し、これから成長できる材料を見つけたようだ。
「レフリングがうちのラグビーと合わなかったという感じもしましたが、そこをアジャスト(調整)できなかったというのも若いチームだなと」。試合前に「シンプルに行こう」と声をかけていたが、「練習してきたことをできなかったですね。心の甘さというか、普段まったくしないようなプレーを選択してみたり…。そのへんがまだ若いチームですね。まだまだ落とし込みが足りなかったかなという気がします」。
 昨年はワールドユースのほかに第1回全国U18女子セブンズ大会でも優勝していた石見智翠館。これからも福岡レディースとのいいライバル関係は続きそうだ。

 福岡レディースの選手たちも、石見智翠館の存在が自分たちの成長につながったと認める。
「石見さんは後半に強いチーム。それに比べて、自分たちは体力がないのを自覚していた。だから、みんな体力をつけようと課題にしてたんです。福岡レディースはクラブチームなので週一しか集まれないんですけど、平日の(各学校などでの)練習でしっかり努力してこの大会に臨めたので、決勝の逆転勝ちにつながったと思います」(吉野キャプテン)

 近年、多くの福岡レディース出身選手が7人制や15人制の日本代表で活躍している。4月中旬のワールドラグビー女子セブンズシリーズ北九州大会に出場した伊藤優希、堤ほの花、長田いろはもOGで、2017年の女子ラグビーワールドカップで桜のジャージーを着た選手のなかにも末結希、南早紀、江渕まことなど福岡レディース出身者が多くいた。
 優れた選手を輩出していることについて平野監督は、「もちろんそれぞれの学校での指導もありますし、なにより、彼女たちは一生懸命で、ラグビーを心から楽しんでいるのが大きいと思います。楽しいからうまくなりたいという気持ちで毎週練習に来てくれる」と語る。
 吉野キャプテンは、みんな仲良く、助け合い、励まし合って伸ばし合う最高のチームだと言う。そして、初優勝を遂げた。
「いままで先輩たちが積み上げてきた歴史を自分たちが塗り替えようって、大会前にみんなで話していたので、達成してすごく嬉しいです」

笑顔で選手を迎える福岡レディースのコーチ、スタッフ、仲間たち。左端が平野勉監督(撮影:Hiroaki.UENO)
3位決定戦で劇的な逆転トライを挙げた関東学院六浦高校の松澤ゆりか(撮影:Hiroaki.UENO)

 3位決定戦は、初出場の関東学院六浦高校(神奈川)がニュージーランドのホーウィック カレッジに17-14で逆転勝利。9点を追い、残りわずかな時間で懸命につないでキャプテンの粂日向子がトライを挙げ、コンバージョン成功で2点差に詰めると、リスタート後の怒涛の攻撃で再びゴールに迫り、松澤ゆりかがタックラーをかわして体を回転させながらインゴールにねじ込み、劇的な逆転勝ちとなった。
 サニックスワールドラグビーユースの女子セブンズで海外勢が参加するようになったのは2014年大会からだが、それ以来、トップ3を日本勢が独占したのは初めて。
「負傷者も出たなかで、最後は全員で戦ってくれました」と選手の奮闘を称えた梅原洸監督。「うちはディフェンスで勝ち上がってきたチームなので、強みはタックル、タックル、タックル。そこにつきます。フィジカルが強い相手に対してよくタックルに行ってくれました。初出場で3位という成績はびっくりしてますし、うれしい限りです。この大会に出ることを目標にしてきたので、選手たちはここで大きな経験をして、これからも成長してくれると思います」と大会を振り返った。

英・ハートプリーカレッジとの5位決定戦で活躍した追手門学院高校の小林楓夏(撮影:Hiroaki.UENO)

 大阪の追手門学院高校は上位トーナメント進出を逃したが、最終日は2連勝でハッピーエンドとなった。
 5位決定戦ではイングランドのハートプリー カレッジと対戦し、5点ビハインドの試合終了間際、チーム一体となって根気よくつなぎ、小林楓夏が中央にトライ。コンバージョンも決まって12-10と逆転勝ちした。
 部員15人のチームを引っ張った棚町芽以キャプテンは、「体は小さいけど、一つひとつ精度よくプレーして、最後まであきらめずに戦おうとみんなで約束してました。大きい相手でも、抜かれたとしても、最後まで頑張ろうと。昨日(予選リーグ)は、いままで練習してきたことができなくて負けちゃって、一からやり直そうと気持ちを切り替えて、最後まであきらめずにみんな頑張れたと思います。いい戦いをして、いい気持ちで終われてよかったです」と話し、ニッコリ笑った。

 そして7位・8位決定戦は、カナダのベルモント セカンダリー スクールが26-5でロシアのモスクワ ガールズ セブンズを下した。ロシアの女子チームとして初出場となったモスクワガールズは全敗に終わったが、最後、U18ロシア代表でもある身長179センチの大型選手がダイナミックに走ってトライを決め、全員が大喜び。勝ったカナダの選手と互いの健闘を称えあって抱き合い、両チームとも笑顔、笑顔のノーサイドとなった。

カナダチーム(黒)とロシアチーム、笑顔のノーサイド(撮影:Hiroaki.UENO)
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