複数のポジションを務められる松田力也が、SOとして先発する。
4月27日、東京・秩父宮ラグビー場。日本代表候補にあたるウルフパックの10番をつけ、オーストラリアのウェスタン・フォースとの強化試合に出場する。かねて言っていた。
「もらえるゲームタイムのなかで、レベルアップしていくしかない」
身長181センチ、体重92キロ。防御を死角からえぐる走りが魅力の24歳は、京都・伏見工高時代から大学生中心のジュニア・ジャパンで活動。日本代表デビューを果たした2016年度には、帝京大副将として大学選手権8連覇を達成している。
高校では15番のFB、大学では10番のSOを主戦場とし、2017年入団のパナソニックでは12番のインサイドCTBでプレー。2016年秋から発足したジェイミー・ジョセフ体制のジャパンでは、指揮官から「私の見立てでは10番」と期待されている。今季は1月下旬からサンウルブズに入り、国際リーグのスーパーラグビーに参戦。日本代表と同種の戦術を使うチームのSOとして、ハイレベルな試合経験を積みたいと願った。
ところがサンウルブズでは、名キッカーのヘイデン・パーカーがSOに君臨。日本代表アタックコーチでもあるトニー・ブラウン ヘッドコーチのもと、松田はSOとして1度しか先発できなかった。途中交代時もおもにCTB、FBに入った。3月17日からはウルフパックを支えるラグビーワールドカップトレーニングスコッドキャンプへ合流し、日本代表正SO候補の田村優と切磋琢磨。今回、ジョセフ ヘッドコーチのもと10番を与えられた。
4月20日、千葉・ゼットエーオリプリスタジアムでのウルフパックの試合では12番をつけた。田村の隣のポジションでスターターを務めたのだ。試合途中からはSOに入った。
若手主体のハリケーンズBに66-21で勝つなか、「横で優さんを勉強しろというメッセージだったと思いますし、自分自身もスーパーラグビーで感じたコンタクトレベル(での感触など)を活かせるようにプレーしたいと思っていました」と述懐する。
「優さんの横でプレーするなか、キックを蹴るタイミング、どういうコールを外から欲しがるのか、(手前に立つ)FWにどんなコールを出しているのかが全てわかります。そこは大きいです」
SOとしてプレーするさなかはキックをチャージされたが、「オプションとしてはよかった」とプレー選択に至るまでの判断は悪くなかったと強調する。SOは、全体を見渡してチームの動きを決めるポジションだ。12番でプレーしていた時間帯には、キックパスでトライを演出した松田。そのシーンを「いい流れでプレーできた」とした。
反省も忘れない。この日は周囲から「(プレー中の)コミュニケーションが少ない」と言われたようで、「僕の前に立つFWにコールを出すなど、優さんが全てをやらなくて済む(負担を減らす)ようにしたかった。相手の速い(飛び出す)ディフェンスに対し、もっと有効なアタックができるようにしゃべってはいたんですけど、もっとレベルアップしないといけない」と話す。
「スーパーラグビーで10、12、15番をやらせてもらって、コンタクトの部分などでいい意味での余裕はできました。複数のポジションをやりながら最後は10番をつかめるようにしていきたい」
願いを叶えるための80分を過ごす。