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NZ代表マッケンジー離脱でサンウルブズのパーカーに熱視線? W杯へ、カーター復帰望む声も

2019.04.25

スーパーラグビーで最高のゴールキッカーと称賛されるサンウルブズのヘイデン・パーカー(Photo: Getty Images)

 今年9月20日から11月2日にかけて日本で開催されるラグビーワールドカップで、史上初の大会3連覇を狙うニュージーランド代表“オールブラックス”だが、SO(スタンドオフ)、FB(フルバック)としてプレーできる重要な戦力として期待されていたダミアン・マッケンジーがスーパーラグビーの試合で右膝の前十字靭帯を断裂してワールドカップ出場が絶望的となり、代わりに誰をスコッドに入れるべきか、ニュージーランド国内で議論が熱を帯びている。

 その中のひとりとしてメディアの間で名前が挙がっているのが、現在サンウルブズでプレーしているヘイデン・パーカーだ。身長175センチ、体重82キロ、ニュージーランド南島オタゴ地方にあるオマルー出身の28歳であるパーカーの最大の魅力は、左足で放つ正確なプレースキック。
 昨年のスーパーラグビーでは、ゴールキック50本中48本決めて成功率96%という驚異の数字をマークし、連続成功は38回で大会新記録を樹立した。今年も10節を終えた時点でわずか2本しか外しておらず(36本中34本成功)、成功率は94%と抜群に安定していて、いまや世界最高のゴールキッカーと呼ばれている。

 そんなパーカーを高く評価するのは、1996年から99年にかけてオールブラックスのヘッドコーチを務めたジョン・ハート氏だ。かつての名将は今週、自国のラジオ番組でパーカーについて「彼は経験豊富で、最高のゴールキッカーのひとりであり、勇敢だ」と語り、3番手SOに推している。

 ニュージーランドラグビー協会は原則的に、海外を拠点にしている選手はオールブラックスに選出しないため、日本チームのサンウルブズでプレーし、神戸製鋼コベルコスティーラーズの選手でもあるパーカーは、現時点ではオールブラックス入りの資格を持っていない。

 しかしハート氏はそれについて、パーカーと所属クラブの契約について詳しいことはわからないとしながらも、今年のスーパーラグビー後にパーカーを呼び戻してマイター10カップ(ニュージーランド国内大会/8月8日~10月下旬に開催)でプレーさせ、来季スーパーラグビー契約を母国のチームと結べば代表選出は可能なのではないかと見る。
 そんなサプライズマジックが実現するかどうかはわからないが、パーカーはオールブラックスに値すると多くが認める選手であることは間違いない。

 今年のワールドカップでオールブラックスの10番として有力視されているのは、ワールドラグビー年間最優秀選手賞に2回選ばれたことがあるボーデン・バレットで、マッケンジーが負傷離脱したいま、スーパーラグビー3連覇を狙うクルセイダーズのSOリッチー・モウンガが2番手と見られている。
 オールブラックスは2011年の自国開催ワールドカップで負傷者が相次ぎ、追加招集の2人を含め4人のSOを必要としたが、今回、バックアップメンバーとして招集を期待する声が多いもうひとりは、黒衣を着て112キャップを重ねたレジェンド、ダン・カーターだ。

2015年ワールドカップで優勝を遂げ、リッチー・マコウ主将とともに優勝杯を掲げるダン・カーター(右)
(Photo: Getty Images)

 現在はパーカーと同じく神戸製鋼の選手であるカーターは、今年4月に首の手術を受けリハビリ中で、フルコンタクトができるのは10月からと見られている。しかし、ニュージーランド・ヘラルド紙が読者に「誰をオールブラックスの3番手SOにすべきか?」アンケートをとったところ、カーターが最多得票(25%)で、2位がブルーズのオーテレ・ブラック(18%)だったという(パーカーはリストに入っていない)。
 昨季トップリーグでMVPに輝いたカーターは37歳になったいまもワールドクラスだが、連覇を果たした2015年のワールドカップを最後にオールブラックスから引退しており、首の手術を終えたばかりで代表復帰の可能性は低いが、ファンの人気は依然高い。

 そのほか、50キャップを持つ30歳のアーロン・クルーデンが現在プレーしているフランスから帰国し、スーパーラグビー終盤に、ダミアン・マッケンジーを失った古巣チーフスに加わるのではないかという噂が立ったが、同クラブのコリン・クーパー ヘッドコーチは獲得を否定。それに、クルーデンは現所属のモンペリエで不調が続いており、もし帰国してもオールブラックス復帰の道は簡単ではない。

 オールブラックスのスティーヴ・ハンセン ヘッドコーチとセレクターたちがワールドカップに連れて行くSOは2人だろうと予想する声もあり、SOをカバーできるユーティリティBKのジョーディー・バレット(ハリケーンズ。ボーデンの弟)などは貴重な選手といえる。
 また、必要なのは3番手SOではなく、アウトサイドバックをカバーできるFBだという声もあり(マッケンジーはエキサイティングなFBでもある)、2017年にオールブラックスで3キャップを獲得し、クルセイダーズでは背番号15をつけ12番でもプレー可能なデイヴィッド・ハヴィリも候補選手のひとりとして注目されている。

22歳のユーティリティBK、ジョーディー・バレット。代表9キャップ(Photo: Getty Images)
カウンターアタックが魅力のデイヴィッド・ハヴィリ(Photo: Getty Images)