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サンウルブズ、元王者ハリケーンズに惜敗。「プレッシャーの中での経験を積み重ねるしかない」

2019.04.19

落ち着いてチームをコントロールしたハリケーンズのTJ・ペレナラ(撮影:松本かおり)

 金曜日の夜、1万6805人の観客が集まった東京・秩父宮ラグビー場で、日本チームのサンウルブズが元チャンピオン相手に熱闘を繰り広げた。しかし、勝てなかった。4月19日、スーパーラグビーの第10節でニュージーランドの強豪ハリケーンズと対戦し、16点リードをひっくり返され、23-29で敗れた。

「まずはサンウルブズを称えなければならない。特に前半は大きな圧力をかけてきていた。それに対して、私たちはエラーが多すぎた。そのエラーを相手がしっかりと突いてきたということ」
 勝ったハリケーンズのジョン・プラムトゥリー ヘッドコーチは接戦をそう振り返った。

 サンウルブズは、試合前にトニー・ブラウン ヘッドコーチがフォーカスポイントにあげていた通り、ディフェンスでプレッシャーをかけ続けた。2年前に同じ会場で17-83と惨敗を喫した相手、2016年王者を苦しめた。

 サンウルブズは前半6分、ラインアウトからのムーブで、本来はFW3列の選手でありながらインサイドCTBで起用されたラーボニ・ウォーレンボスアヤコがハーフウェイから中央突破してダイナミックな走りで大きくゲインし、WTBセミシ・マシレワにつないで先制トライを挙げた。
 期待通りの活躍をしたウォーレンボスアヤコについて指揮官は試合後、「彼は12番でも十分できることを証明した。もう2か月もすれば、日本代表でも12番をつけるかもしれない」と潜在能力を認める。

 安定感抜群のキッカー、SOヘイデン・パーカーがタッチライン近くからのコンバージョンを決め、13分にはPGで加点し、サンウルブズは10点リードした。

 ハリケーンズは、SOボーデン・バレット、ユーティリティBKジョーディー・バレット、FLアーディー・サヴェアといったスターを休ませ、負傷のHOディン・コールズ主将らを欠いて戦力が落ちていたが、14分、ニュージーランド代表SHでもあるTJ ・ペレナラがディフェンスのギャップを抜けてゴールに持ち込み、悪い流れをいったん止めた。

 しかしサンウルブズはプレッシャーをかけ続け、22分、27分にPGで加点し、リードを広げる。
 28分にはFLダン・プライアーがハードタックルで相手に落球させ、ターンオーバー、SOパーカーが無人の左スペースへ絶妙なクロスキックを放ち、WTBマシレワが確保してゴールへ走り切り、23-7となった。

好走連発で2トライを挙げ、守りでも奮闘したサンウルブズのセミシ・マシレワ(撮影:松本かおり)

 サンウルブズのディフェンスは激しく、堅く、粘りもあり、ハーフタイム前に相手にショットチャンスを与えたものの、23-10で折り返した。

前半はいいディフェンスプレッシャーをかけていたサンウルブズだったが…(撮影:松本かおり)

 しかし、ハリケーンズはあわてなかった。
「前半はこちらが多くミスをして、それを相手に突かれた。後半は、いつも自分たちがやっていることを実行するだけだった」(ハリケーンズのゲームキャプテン、TJ・ペレナラ)

 後半はハリケーンズが支配する。49分(後半9分)、サンウルブズがディフェンスでプレッシャーをかけてきたところへCTBンガニ・ラウマペが裏にキックでボールを転がし、タッチライン際で確保したWTBベン・ラムが左隅にフィニッシュ。
 59分には、敵陣深くでLOイサイア・ウォーカー=レアウェレがキックチャージし、FBチェイス・ティアティアがトライを決め、コンバージョンも成功で1点差となった。

 そして67分、サウンウルブズのラインアウトが乱れ、攻めに転じたハリケーンズはボールをつなぎ、右WTBウェス・フーセンが自らキックしたボールを快足で追って競り勝ち、さらに足にかけてインゴールで押さえ逆転した。

 6点を追うサンウルブズはラスト10分間、敵陣深くで猛攻を続けたが、ハリケーンズは耐え、スクラムでのターンオーバーも勝負の分かれ目となった。奮闘したサンウルブズだが、ラインアウトなど大事な場面でミスもあり、金星獲得とはならなかった。

 サンウルブズのゲームキャプテンを務めたダン・プライアーは、「訪れたチャンスは必ず、ものにしなければならない。最後のラインアウトのように、プレッシャーを受けてミスをすると、強いチームは必ず、そこを突いてくる」と悔しがった。

 ブラウン ヘッドコーチは、「どんなチームとやっても勝てるだけのラグビーはやっている。ただ、後半は自分たちでプレッシャーに押しつぶされてしまった。それを克服するには、『プレッシャーの中でラグビーをする』という経験を毎週積み重ねるのみだ。毎週やって、それを何年も積み重ねるしかない。ハリケーンズのように優勝経験のあるチームには、それがある」とコメントした。

 2020年を最後にスーパーラグビーから撤退することになったサンウルブズだが、その残念なニュースのあと初めて臨んだ国内ホームゲームで、ファンの熱い声援もあり選手たちは奮闘した。

 ハリケーンズのペレナラは、「このスタジアムはとても雰囲気が良かった。もちろん、僕らが応援されているわけではないのだけど、ファンの皆さんが、ラグビーそのものを楽しんでいることが伝わってきた」と、フライデーナイトの熱戦を振り返った。

 サンウルブズは今季これで2勝7敗。次週は秩父宮ラグビー場でハイランダーズ(ニュージーランド)に挑む。