ビジネスだけではなく、スポーツの世界でも注目される「データ」。そしてその「分析」。
それはラグビーも例に漏れず、緻密なデータ収集と分析が前回ワールドカップの日本代表の勝利につながったことは、4年たった今でも折に触れて紹介されることがある。
では、トップチームのアナリストは具体的にどこを見て、何を考えているのか。大学生がそんなことを学べる場所を作りたい、と声を上げたのが、以前もご紹介したプレーしないラグビーサークル「早稲田ラグビー戦術研究会」幹事の井坂さんである。
話を耳にしたのはNECグリーンロケッツでアナリストを務める宮尾正彦さん。後進を育てることにもつながれば、と仲間に声をかけ、秋廣秀一さん(日本体育大学ラグビー部ヘッドコーチ)、加藤修平さん(前リコーブラックラムズ)、立川公介さん(キヤノンイーグルス)の4人が講師役として集まり、2019年の3月末、学生たちとともに「Analysts Meet Students」と題されたイベントが開催された。
参加した学生は、実際にプレーヤーとして活動する者から、スタッフとしてチームを支えている者、あるいはC級レフリーをしている者、競技経験は無いがよりラグビーを奥深く観戦したいという動機で参加した者まで、12人。所属する大学やチームも異なり、ほとんどが初めて顔を合わせる面々だった。
テーマは「ディフェンス」。まずは国際試合や練習試合の映像を見ながら、特定のプレーについての分析・解説が行われた。セットプレーからの各選手の動き、ディフェンスの立ち位置や判断を見ていく。参加した学生たちにも意見を求めながら、宮尾さんが強調したのは、「正解は1つではない」ということ。1つのプレーの背景には様々な要因があり、人によっても着眼点が違う。また、別チームのディフェンスの決まり事は正確にわからないし、映像にも映らない位置に立っている選手が影響していることもある。実際に、講師役を務めた4人の中でも意見が分かれることもあった。
後半には、アナリストたちが試合後にどんな形でデータを見せているかの紹介が行われた。テレビ放送などでも紹介されることもある「タックル成功率」でも、どの高さに行った時まで含めてデータを取って分析する、選手が自分で気づくようにあえてデータはロッカールームに貼り付けるだけにすることもある……など、現場での工夫も交えた話があった。
3時間を超えるイベントを通して、参加した学生たちからは、自分たちの考え方の幅が拡がった、新しい視点を持つことができた、といった意見が聞かれた。手探りの中で行われた初めてのイベント、参加者もほとんど初対面ということもあって、やや緊張感のある中でのスタートになったが、終了後には懇親会も行われ、引き続き様々な質問が交わされた。
主催した井坂さん、宮尾さんによると本イベントは今回限りのものではなく、今後も2回、3回と続けていきたいとのこと。次回開催が決まれば、早稲田ラグビー戦術研究会のTwitterアカウントで告知が行われる予定だ。(野口弘一朗)
早稲田ラグビー戦術研究会のTwitterアカウント
https://twitter.com/waserugStrategy