来年に控える東京オリンピックに向けて、絶対に負けられないコアチーム昇格大会。
10代の選手たちも多い若いチームに活力を与えたのは、3年半ぶりの代表復帰、それも「強いこだわりがある」という香港で、サクラセブンズに戻ることになった小さな“ビッグインパクト”プレーヤーの存在だった。
「年齢も上になってきて、自分のことよりもチームのことを上げていきたいという気持ちが強くなった」
そんなふうに、自らの心境の変化を語る身長150センチの鈴木陽子は、メキシコ、スコットランド、ベルギーとの対戦となった大会初日のプール戦3試合でいずれも後半途中出場。
「アジリティで相手の裏に出られる。そこは他の選手にない強みだし、うまく機能した。裏に出てくれるので、かなり助かる」と、稲田仁ヘッドコーチも高く評価した小気味のいいランニングで相手ディフェンスを撹乱して計4トライを挙げるなど、プール戦総合1位で準々決勝進出を決めたチームを牽引する活躍を見せた。
「リオの後、いろいろなことを経験して、もっともっと人間として成長していかないとプレーもそれ以上良くなっていかないというのを感じた」という鈴木は、昨シーズンの国内大会でのパフォーマンスを再評価されるかたちで、女子SDS(セブンズ・デベロップメント・スコッド)2チーム体制で臨んだドバイセブンズ国際招待大会(昨年11月)では、SDS1という名のBチームでプレー。
その後、3月の女子SDSフランス遠征で14人の遠征メンバー入りし、今回の香港での絶対に負けられない戦いでサクラセブンズへの復帰を果たすことになった。
「以前のチームは目の前のことにガツガツしていて、それがいいところでもあり、悪いところでもあった。いまは柔軟性があるというか、すごく落ち着きがある子が多い。そんなチームで自分も成長させてもらっている。リオ以降は出ていなかったし、初代表のつもり。自分が一番下という気持ちで帰ってきた。若い選手たちを見習ってスマートなプレーができるようになっている」
元々、消防士のクラブチームでプレーしていた父親に連れられるかたちで物心ついた頃から毎年のように香港セブンズ観戦に訪れ、当地のラグビースクールの子どもたちに混じってユーストーナメントに出た経験も持つ鈴木にとって、“セブンズの聖地”香港は当然ながら特別の意味を持つ場所。
「オリンピックが決まる前から香港セブンズで優勝するのが夢だった」
その幼少期からの夢の実現のための課題も明確だ。
「(初日は)キツくなってくる後半に、ミスが出たり、ペナルティが増えたり、点取られたりというのが多かった。決勝で勝ち切るには後半のプレーの精度。自分たちがやってきたベースのところをクォリティ高くやっていく。そこを一番意識したい」
「グラウンド外でいっぱいコミュニケーションとって、年齢差を感じさせないでフランクになんでもしゃべって、信頼関係をつくることを意識している」
ジェネレーションギャップを埋めるチームのムードメーカーぶりも買って出ながら、憧れでもあり、慣れ親しんだ場所でもある香港スタジアムで、「後半からしっかり入って相手が疲れているところで機動力になって、もう一段ギアを上げること」だという自らの仕事を全うしての頂点獲りを目指す。