ラグビーリパブリック

選抜大会で快進撃。関西学院高等部ラグビー部、「無心」の鼓動。

2019.04.02

関西学院高等部の兪瑛士キャプテン(撮影:向 風見也)

 関西学院高等部ラグビー部の兪瑛士(ゆ よんさ)主将は、顔に枯芝をつけたまま「身体は小さいですが、機動力、フィジカルでは絶対、負けない」と言った。身長169センチ、体重90キロのHO。直前までしていた試合で、ロータックルと球への絡みで渋く光っていた。
 
 新2年生ながら主軸の平生翔大も、身長173センチ、体重98キロと大きくないが攻守に強さを発揮。「チームがきつい時に自分がどれだけ走れるか。そのためにはグラウンド外でも、挨拶などの当たり前のことをどれだけできるか(が大事)」と強調する。

 3月31日、埼玉・熊谷ラグビー場・Cグラウンド。全国高校選抜ラグビー大会の予選プール2戦目に挑んだ。佐賀工に19-14で勝利。チームにとって11大会ぶり2度目の出場となる今回、これで戦績を2戦2勝とした。計8チームによる決勝トーナメント進出を決めた。兪と平生が口を開いたのは、その直後のことだった。

 冬の全国高校大会(花園)では2010年度に4強入りも、近年は同じ兵庫県の強豪である報徳学園の後塵を拝してきた。ところが新チーム始動後は、近畿新人大会で4強入り。この大会で報徳学園が初戦敗退を喫したのに対し、選抜大会行きを決めた。

 元CTBでハンドリングスキルにも長ける平生は、「自分たちから原点に戻って、自分たちのラグビーはどういうものかを考えました」。目標達成のためにチームの大義を設定するにあたり、私生活を見直したという。

 普段から誠実に暮らし、生きざまをプレーに反映させる。その方針を先頭に立って具現化するのが、神戸朝鮮中出身の兪だった。全国4強入りしたシーンを見て同校行きを志したというリーダーは、一戦必勝を誓うのみだ。

「チームの主将として、僕から勢いづけられるプレーヤーにならなければいけない。僕のディフェンスからこのチームの勝利をつかめたらと思っています」

 攻めてはFWが左右にまんべんなく散るポッドシステムを採用。佐賀工戦ではCTBの齊藤綜馬が絶妙なキックで試合を制御も、本来はどこからでも球をつなぐプレーを志向していそう。兪主将、平生も、防御を引きつけながら深い角度のパスを放てる。

 安藤昌宏監督は、佐賀工戦後にあまり大喜びしない選手たちを見て「ずっと一つひとつ戦っていくと言っていた。選手は僕たちが思う以上に成長していた(とわかった)」「いま、彼らは無心なんでしょうね」「高校生はすごいですね」と言葉をつなげていた。
 4月2日、埼玉・熊谷スポーツ文化公園補助陸上競技場で、浦和との予選プール最終戦に挑む。

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