初戦は0-130で負けた。
第2戦は3-52。
相手は天理と流経大柏、ともに全国トップクラスだ。
埼玉・熊谷で3月29日からおこなわれている全国高校選抜大会。同大会に推薦枠で初めて出場し、予選リーグを戦っている新潟・北越(ほくえつ)高校が開幕から2試合続けて敗れた。
しかし、成長を見せている。
2試合とも大敗には違いない。戦った相手のタイプも異なるから、詰まった点差だけで「成長」とは言えないかもしれない。
しかし、試合内容が良くなった。当事者も観る者も、そう感じた。
3月31日、流経大柏との試合を終えたCTB神田凜主将は、「きょうは天理戦と比べ、自分たちがやってきたことを出せた」と話した。
最終的には3-52も、前半は3-14とやり合った。
キックオフから攻め込まれるも、粘り強く守ってターンオーバー。PR稲田拓巳が倒れた相手のボールをもぎ取った。
その後、スクラムからの攻撃でサインプレーを仕掛け、FB佐藤航大が抜け出す。敵陣に入った。
前半21分に先制点を許すまで拮抗した攻防が続いた。前半終了間際にはPGを決めた。
ディフェンスから。いつも、そう言って力をつけてきたチームだ。
新潟県内では新潟工に続く2位という状況が続いている。そのライバルと比べるとラグビースクール出身者は少ないから(2人だけ)、鍛錬と意識で高められるディフェンスとサポートプレーに力を入れる。
中学1年生のときに新発田ラグビースクールでプレーを始めた神田主将は、2日続けての試合にも、疲れを見せなかった。むしろ、前日の体感が残っているうちに試合ができてよかったと話した。
「天理には、全国の力を見せつけられました。タックルで倒すことはできたのですが、順目にどんどん攻める相手についていけず走られました」
次戦は、その反省を活かした。
流経大柏のフィジカルの強さは知っていた。
「なので、一人ひとり、タックルで負けないようにしようと言って試合に臨みました。みんな気持ちも入って、前半は自分たちがやってきたことを出せたと思います」
手応えがあった。
その一方で、足りない部分もあらためて分かった。
「強みを60分出し続けないと勝てない。そして、プレーの精度をもっと高めないと。きょう(流経大柏戦)も、いいところまで攻めながら取り切れないし、守り切れない。難しいことをしようとしているわけではないのに、自分もそうでしたが、ミスをしてしまう」
全員で筋トレに取り組んできた。体を大きくしたことをプレーに活かせていることは感じている。
だから、もっと基本プレーを精度高く、強く実行できれば、強豪相手にも戦える。
「新潟工業を目標にしているだけでは、花園予選で勝てたとしても(全国では)こうなる(大敗する)と分かりました。ここで知ったレベルを忘れずにやっていきたい」
4月2日には大分舞鶴戦を控えている。「この2試合の悔しさを出して戦って、ディフェンスから勝ちたい」と話した。
チームを指導する増田宇宏先生は、この大会中に、監督5年目をスタートさせる。コーチ時代も含めると8年目のシーズンだ。
チームの柱となっているディフェンス、サポートプレーの徹底に加え、教え子たちに、いつもこう呼びかける。
「相手は同じ高校生。努力すればなんとかなる」
ラグビー経験者の多いチームをこの世界のエリートとするなら、そういう相手には負けん気を持って立ち向かおうと。
同監督は新潟大学ラグビー部時代、東日本大学セブンズでレギュラー選手も出場した早大を破ったことがある。
秩父宮を沸かせたLOは、その後、セブンズ日本代表の候補合宿にも呼ばれた。
全国地区対抗大学大会で頂点に立つことを目標に、ラグビーと真摯に向き合っていたら確かな力を得た学生時代。そんな経験があるから、教え子たちにも同じ感激を味わってほしい。
「花園など大きな目標に向かったり、ライバルチームの存在のお陰で人として成長する。そんな人生を歩んでほしいと思っています」
普段の何倍もの経験を体感できる全国選抜大会。
2試合で戦った120分、奪った3点、取られた182点のすべてが、大分舞鶴戦と、チームがこれから進化するためのエナジーになる。