ラグビーリパブリック

カリスマ主将の後任NO8。長崎北陽台・中原拓海の粘りに見る「覚悟」。

2019.03.31

浦敏明コーチの話を聞く中原拓海(撮影:向 風見也)

 ラストワンプレー。24-27と3点差を追う長崎北陽台は、自陣中盤で防戦一方。ラックの連取で時間を使う日本航空石川に、タックルと接点への打ち込みを重ねる。

 3月30日、埼玉・熊谷ラグビー場のCグラウンド。全国高校選抜ラグビー大会の予選Dグループ初戦に挑んでいた。

 勝負どころの肉弾戦で鋭くしぶとかったのは、中原拓海。前年度主将の山添圭祐が務めていたNO8へ入り、対面で留学生のパトリク・ヴァカタにも真正面から突き刺さる。球に絡む。

 向こうのノックオンを誘ったところで、ノーサイドを迎えた。本人は、自分に厳しかった。

「FW全体が取り返すという意識がないと。(個人的な手応えは)ところどころあったんですけど、(接点に入ったまま)寝てしまった(ところがあった)。そこは意識してやりたいです」
 
 県下有数の進学校でもある長崎北陽台は昨季、大阪・東大阪市花園ラグビー場での全国高校ラグビー大会で11年ぶりに8強入り。8チーム中、唯一の公立校とあって注目された。特にNO8だった山添のタフさは話題を集め、高校日本代表にも選出された。

 しかし東福岡との花園準々決勝を12-40で落としてからは、公立校特有のハードルに直面する。

 当時の男子部員数は29人と少数精鋭。いまはマネージャーや女子部員を除いても8名の3年生が引退しているため、今度の選抜大会での登録選手数は上限より4人少ない21名だ。

 特にFWの先発は5人、入れ替わり、「FWが若くなった。どうしてもイチから…という部分がある」と品川英貴監督は明かす。特に先の九州新人大会では、ぶつかり合いで苦しんだようだ。そのため選抜大会前の1か月、接点でのプレーに注力してきたという。日本航空石川戦では身上の粘り強さをアピールしたように映ったが、品川監督としては「まだまだ」とのこと。

 いずれにせよ、すごろくの振り出し付近に戻った駒を一気に中間地点まで戻した格好だ。なかでも指揮官に称えられるのが、本来のLOからNO8に移ったばかりの中原なのだ。品川監督は中原を、「短期間で伸びてきています」と称える。

「去年までは3年生の陰に隠れて、どちらかと言えば身体を当てるのを嫌がっているようなタイプの選手。今年はいよいよ自分がやらなきゃいけないことになって、覚悟して、意識が変わってきたなぁって」

 身長184センチ、体重91キロの中原は、長与ヤングラガーズでは長崎北陽台初代監督の浦敏明に師事。自然な流れで、いまも浦がコーチをする長崎北陽台へ入った。

 文武両道を掲げる長崎北陽台では、校則により午後7時までには部員全員が下校しなければならない。さらに「部活動の時間がただでさえ少ないなか、テストの点が悪かったら補習がある」と中原。各科目の教諭に「助けられている」と笑う。

 昨季の全国8強入りで「いろいろな課題が見つかった」とも話す。高いレベルで戦うにはさらなるフィジカルと持久力が必要だと自覚し、いまに至っているようだ。

「去年、山添さんをずっと見てきている。接点に強く、きついなかでもゲインできる選手。そこも超えて、プレーで引っ張れるようになりたいです」

 賢く粘り強いクラブの新しい象徴になれるか。31日は熊谷の補助陸上競技場で、選抜優勝経験のある東海大大阪仰星と予選Dグループ2戦目をおこなう。

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