9トライを奪われてなお、意志を強くした。
3月29日に始まった第20回全国高等学校選抜ラグビーフットボール大会の開幕戦。開催県枠で出場の浦和高校は開幕戦で佐賀工と戦い12-59と完敗した(前半:7-31)。
ただ、これで迷うぐらいなら、ここまで来られなかった。秋田中央、関西学院と続く戦いへ向け、あらためて自分たちのやるべきことを明確にした。
「もっとツメないと」
戦いを終え、監督、選手たちはそう口にした。
WTB森山翔斗やFB矢次竜介など、佐賀工のランプレーを得意とする選手にアウトサイドを走られたこの試合。三宅邦隆監督は、「うちの強みは愚直に前に出るディフェンス」と前置きした上で、試合を振り返った。
「そういうディフェンスをしているので、外が空くのは仕方がない。(思い切り前に出る)シャローで(相手との間合いを)ツメるのが自分たちのやり方。きょうは、そこをやり切れなかったところがだめでした」
選手たちも同じ考えだった。
狙いすましたタックルを何度か決めた新2年生、CTB東島和哉は言った。
「外を抜かれたのは、ツメ切れなかったから。もっと徹底しないといけなかった」
好タックルが決まったシーンを振り返る。
「もうひとりのCTBの吉田凱さんを信頼しています。吉田さんはうまいので、自分はターゲットを絞っていける。ただ、バインドが弱くて外されたところがありました」
次の試合では、もっと前へ出ると誓った。
中学時代にラグビーをプレーしていた選手は部内にふたりだけという浦和。それでも埼玉を制し、全国の舞台に立てたのは、それぞれのやるべきことを絞り込み、徹底するからだ。
防御では「極端に前に出る」。それに集中するから東島も楕円球を手にして1年弱でしっかり戦える。
大宮南中ではバスケットボール部だった。178センチと背は高いが68キロしかなかった体重は、筋トレと食事により80キロに。やるべきことを絞り込んだから結果を残せた。それが自信になって成長した。
大敗はしたが、奪った2トライは浦和らしかった。
前半3分にトライを奪われて先制されるも、その5分後にインゴールに入ったのはNO8の松永拓実主将が決めたもの。PKからFWで攻め切った。
ボールキャリアーとして先頭を切って突っ込むこともあれば、ラックやモールの後方で戦況を見ながら、ここ、というときに自身で攻めるのが新3年生では唯一のラグビー経験者である主将の持ち味。
「ゴールポスト周辺は薄い守り方をしていたので、そこに持ち込みました」
大舞台でも落ち着いて狙いすました。左のポスト下に鋭く飛び込んだ。
後半、インジャリータイムに入ってからの2つめのトライは、新2年生のHO山際毅雅が決めた。同学年でただひとり、中学時代にも楕円球を追っていた経験を活かし、好機をものにした。
10分近く佐賀工ゴールライン前で攻め続けるも、なかなかインゴールに入ることができなかった状況で攻め切った。
「あそこは執念でした。FWで取り切らないと浦和じゃない、と思ってプレーしていました。LOの梯さん(かけはし/拓人)がぐわっと前に出てくれたので、本来、自分はオーバーするプレーヤーなのですが、あそこはピック・ゴーでいきました」
大敗も、通用するところはあった。足りないところもたくさん。
松永主将は「やれるところはあったけど、それを60分続けないと戦えないと分かりました」と話した。
「自分自身、(突っ込んだときに)押し戻されるところもありました。すぐにうしろを向いて(サポートにボールを渡して)しまったところもあった。もっと強気でいかないといけないし、FWは最後に頑張りましたが、もっと激しくいかないと」
3月31日に秋田中央、4月2日に関西学院と戦いは続く。
OBも含め、多くの人の声援が届く中で喫した敗戦で得たものを活かし、勝利へチャレンジし続ける。