黒いTシャツの左脇。「坂東武者の名を留めし~」の文字があった。
178センチ、82キロの小林宗也(そうや)は東京・昭島の栗田工業グラウンドにいた。
3月24日から27日におこなわれた2018年度第6回TID(Talent IDentification)キャンプ。同キャンプは、各カテゴリーの代表に、国際舞台で戦える選手を送り出すのが目的だ。17歳の好ランナーは、その中で鍛えられた。
『坂東武者~』は神奈川県立横須賀高校の前身、旧制横須賀中学の校歌で、長く歌い継がれている。小林は、同校ラグビーのFBとして活躍する。数日後には、最終学年のスタートを切る。
昨年の12月下旬、ビッグマン&ファストマンを集めたキャンプ(2018年度第4回TIDキャンプ)に招集されたのに続き、今回も、可能性を秘めた若者たちの中に身を置いた。
3月27日午前で全日程を終え、「刺激がたくさんあった」と笑顔を見せた。
高校生ばかりだったビッグマン&ファストマン・キャンプと、ジュニア・ジャパン経験者+U20代表入りを睨んだ大学生たちがいる今回。小林は、ワンランク上の集団の中にいるように感じた。
「先輩たちもいて、レベルの高さを感じました。最初は緊張もしました。でも、やるべきことを徹底しようと思い、集中しました」
ビッグマン&ファストマンキャンプのときには、全国から大きい人、速い人が集められた。その中でも、自分の強みであるスピードが通用する手応えをつかむことができたが、今回は、「まだまだ」の感覚も大きかった。
「フィジカル面で勝てないので(他の面もなかなか出せない)」
ただ、そういう中でも対応力を見せられた。
意識してきたスワーブで勝負したシーンだった。今回のキャンプ中におこなわれた法大との試合で、それを活用してゲイン。自信も得た。
先輩たちに尋ね、教わったこともタメになったという。
FBの稲吉渓太(同志社大1年)がアドバイスをくれた。
「FBやアウトサイドの選手は、試合の状況がいちばん見える。だから、内側の選手たちに、どこが、どういうふうに空いていて、そこをどうやって攻めようとか、具体的な指示を出すことが大事、と」
50メートルを6秒台前半で走るスピードだけでなく、視野の広い選手を目指す。
小学2年生から中学3年生まで硬式テニスをプレーした。ラグビーは県立横須賀高校に入学してから始めた。
6歳上の兄・宗義さんも同部の出身だったから、興味を持っていた。
硬式テニスでは県の18位。高校に入ってからやってみた円盤投げでも県の12位に入るなど、アスリートとしての資質が高い。
チームではFBからのキックカウンターを得意とする。プレースキッカーとしても優秀で、イングランド代表SOオーウェン・ファレルの映像をチェックし、参考にする。
TIDキャンプへの参加を重ね、「ラグビーの概念が変わってきた」と話す。
もっと屈強な体にならなければ。広い視野も得たい。
「U18日本代表に選ばれるように頑張りたい」と口に出せるのも、向上心が高まった証拠だ。
将来は大学でラグビーをやりたいと思っている。早大に魅力を感じている。