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2020年最後にサンウルブズはスーパーラグビーから除外 SANZAARが公式発表

2019.03.22

今年も秩父宮ラグビー場に多くの観客を集めているサンウルブズ(Photo: Getty Images)

 スーパーラグビーを統括するSANZAARは3月22日、戦略的計画プロセスを通じた過去18か月間の大幅な大会見直しの結果、2020年シーズンを最後に、日本チームのサンウルブズを除外し、2021年からは14チーム総当たりのフォーマットにすると公式に発表した。

 スーパーラグビーは現行のカンファレンス制が複雑と不評で、チーム数増加によるレベルの低下が問題視され、観客減も課題となっていた。テレビ放送権等の契約が2021年から新しくなるため、大会再編とチーム数削減を以前から検討していて、南アフリカとアルゼンチンのチームにとってはアジアへの移動時間もかかり、成績不振が続くサンウルブズは除外候補に挙がっていた。

 また、SANZAARは南アフリカ、ニュージーランド、オーストラリア、そしてアルゼンチンを加えた南半球4協会のジョイントベンチャーであり、ステークホルダーではない日本は放送権料の分配を得ていなかった。立場は弱く、一部報道によれば、2016年から2020年までの5シーズンの参戦契約が切れたあと、再契約の条件として、放送権料の引き上げ分を補う金額、年間約10億円という高額な参加費を求められ、折り合いがつかず、サンウルブズは継続参加を断念することになったという。

 SANZAARのアンディ・マリノスCEOは、「SANZAARは3月上旬、日本ラグビー協会(JRFU)から、サンウルブズの2020年シーズン後の参加を財政的に引き受ける立場にはないと言われた。サンウルブズの未来は、スーパーラグビーがナショナルチームの選手強化にとって最善の道ではなくなったと判断したJRFUによって決定されるだろう。しかし、日本とアジア太平洋地域はSANZAARにとって戦略的に重要であることに変わりはない。私たちは、この見直しプロセスを通しておこなってきたように、JRFU、ジャパンエスアールおよび他の関係者と協力して、現在および潜在的に新しいチームが参加できる真のプロリーグ構造を確立する」とコメントした。

 日本、太平洋諸島、南北アメリカ、香港などを含む、スーパーラグビー・アジア=パシフィック大会の創設も検討しているという。

 日本ラグビー協会の坂本典幸・専務理事とサンウルブズを運営するジャパンエスアールの渡瀬裕司CEOは、本日午後に会見をおこなう。

 奮闘を成績に反映できていないのもマイナス材料だったかもしれない。
 サンウルブズは2016年に、アルゼンチンのジャガーズとともに新規参入を果たし、SANZAARサイドからは「5年以内(2020年まで)に優勝争いのできるチームにすること」という要求があった。しかし、1年目は1勝1分13敗で最下位(18位)、2年目は2勝13敗で下から2番目(17位)、そして15チーム参加のフォーマットに変わった3年目の2018年大会では、“同期”のジャガーズが初のベスト8入りを果たした一方、サンウルブズは3勝13敗で再び最下位(15位)に終わっていた。
 2017年にはライオンズ(南アフリカ)相手に7-94と大敗した試合もあり、元南ア代表ヘッドコーチのニック・マレットからは「日本のラグビー関係者はスーパーラグビーをなめている」と批判されたこともあった。2017年大会終了後に参加チーム数が18から15に削減され、サンウルブズよりも成績が良かったチーターズ、キングズ(ともに南アフリカ)、フォース(オーストラリア)が除外されたことも一部の関係者やファンにとっては不満となっていた。

 海外の一部メディアでは、サンウルブズ除外を強く求めたのは南アフリカの関係者と言われており、その背景には、移動の負担やゲームの質の低下だけでなく、2023年のワールドカップ開催国を決める際に日本が南アフリカではなくフランスを支持した(2023年大会はフランス開催に決定)ことも一因になった可能性があると伝えている。

 タフなスーパーラグビーで多くの黒星を重ねているサンウルブズだが、過去優勝経験があるブルズ(南アフリカ)、ブルーズ(ニュージーランド)、レッズ(オーストラリア)を倒し、今年はプレーオフの常連であるニュージーランドの強豪・チーフス(過去2回優勝)からアウェイ初勝利を果たして世界を驚かせた。2015年のワールドカップでベスト4を独占した南半球4大国のトッププレーヤーを相手に確実に成長しており、日本代表の強化にもつながったことは間違いない。

 そして、世界で最もエキサイティングなリーグといわれるスーパーラグビーに参加し、ざまざまな国の選手が集まって結束した“スーパークラブ”のサンウルブズは多くのファンを魅了した。
 サンウルブズは2016年の新規参入以来、今年3月16日までに東京・秩父宮ラグビー場で17試合をおこない、1試合平均の観客数は14,255人。日本代表の2016年からの国内開催試合(世界選抜との強化試合を含む)観客平均20,796人にはおよばないが、国内最高峰トップリーグが2015-16シーズンに記録した1開催平均最多の6,470人よりもはるかに多い。

 そんなチームが、2020年を最後になくなるのか。
 また、ラストシーズンの大半は2019-2020トップリーグと開催時期が重なるため(トップリーグは2019ワールドカップ日本大会終了後、2020年1月から5月にかけて開催される見通し)、選手集めも難しくなると思われる。

日本、NZ、南ア、豪州、ジョージア…。多国籍軍のサンウルブズは日本代表とは別の夢をファンに与えている
(Photo: Getty Images)