福井翔大は大きくなった。この1年で体重を「10キロ弱」も増やした。
そして身体面と同時に、心構えの領域で成長を実感できた。ラグビー部で主将を務めた東福岡高校を卒業後は、他の同級生とは異なり大学を経ずにパナソニック入り。プロラグビー選手として1シーズンを過ごし、新たな哲学を構築したのだ。
「数値ではわからないプレーの幅、考え方が変わったかなと思います。前までは『ここでアピールしよう』となった時には、インパクトを求めに行っていた自分がいたんですけど、僕のプレーはインパクトよりも運動量(が肝になる)。目立たなきゃいけないという考えよりも、自分の仕事をやり続けるというマインドを持つこと(が大事)。そう教えられた気がします」
公式で「身長184センチ、体重91キロ」のバックローは今年2月、TIDキャンプという日本の若手育成の場に参加した。この隊列には高校時代にも加わっていたとあって、今回は堂々とリーダーシップを発揮。まもなく、日本代表予備軍であるジュニア・ジャパンの主将となった。
年長者もいるチームの船頭を福井に任せたのは、同じパナソニックに在籍の水間良武監督。TIDキャンプでの動きを見て決めた。
2人は、4月から本格的に動く20歳以下日本代表でも二人三脚で強化を進めそう。両軍の指揮官を兼務する水間監督が、改めて福井のよさを語った。
「キャンプではきつい時に周りに声をかけていて、選手としても光っていた。それに(自身と福井との)関係性もあるので、話をしやすい。彼には学ぶ意欲があります。常に。そして、元気ですね。ムードメーカー」
当の本人は「世界を見たら若いリーダーもいっぱいいる。怖気づかずにやっていきたいです」。首脳陣が明大2年でLOの片倉康瑛、神戸製鋼所属でCTBの日下太平、法大2年でWTBの根塚洸雅をリーダーに据えるなか、福井は慶大1年でHOの原田衛に「エンターテイナーリーダー」という役職を任せた。指揮官は喜んだ。
「修行じゃないですから。結果を出すにはオフフィールド(の充実)も大事。そういった仕掛けは我々もしますし、選手から提案があれば話を聞いていきます」
ジュニア・ジャパンは3月8~16日、フィジー・スバでのパシフィック・チャレンジに参加。サモアA、フィジー・ウォリアーズ、トンガAと順に戦う。環太平洋の猛者はパワーに定評があり、なかでも妙技が光るフィジー・ウォリアーズにジュニア・ジャパンはここまで5連敗中だ。
しかし福井は、明るく言い切る。
「(対戦相手は)それぞれに個性があって、楽しみです。中身を追えばそれぞれ違いはあると思いますが、サモア、トンガはフィジカル(が強い)。フィジーはそれと違うフィジカルからの、パス、スピードという感じ。違うラグビーを体験できて嬉しいなと思いますし、勝てれば日本のチームの力を証明できる」
パナソニックではニュージーランド代表17キャップを持つ職人肌のFL、マット・トッドに師事する。「自分が普段やっていないことをやったらミスも起きるし、活躍もできない。僕のプレーは裏方。そこで目立てればいいかなと思います」とし、こうも誓う。
「海外で身体を張り続け、チームを少しでもいい方向に持っていけるようにしていければと思います。僕の場合はマインドを出し過ぎる(気負う)と空回りするので、冷静に周りを見て、チームのために何ができるかを考えていきたいです」