ラグビーリパブリック

「トール」ブラックスの卵だった。サンウルブズLOトム・ロウのつかんだ夢。

2019.02.25

NZ・ダニーデンの出身。教師の資格も持つ。(撮影/松本かおり)


 28歳にして新たな道を歩み出した。
 初めてのスーパーラグビーチームとの契約は、母国ニュージーランドのチームではなくサンウルブズと。
 デビュー戦は2月23日、秩父宮ラグビー場でのワラターズ戦だった。

 200センチ、115キロの巨漢。オールブラックスの前に「T」がつく「Tall Blacks」を目指していた。
「トールブラックス」は、バスケットボールNZ代表の愛称。ロウは19歳以下の同代表、「Junior Tall Blacks」に選ばれた経験がある。
「ラグビーにコードチェンジしたのは5年前。バスケットは、もう古い話だよ」
 14歳まではラグビーをプレーし、CTBとして活躍していた。

 忘れられなかったラグビーに戻ってよかった。
 2017年シーズンからオタゴ代表に選出され、国内選手権で活躍していた。
 そのときに同代表の指揮を執っていたコーリー・ブラウンが、いまはサンウルブズのコーチングスタッフにいる。

 2月16日のシャークス戦ではメンバー入りを逃したが、ワラターズ戦で5番のジャージーを着て先発した。
 夢にまで見た舞台を異国の地で初めて踏み、「とても嬉しかった。勝てなかったのは残念だけど、前の週よりチームが成長しているのが感じられた」と胸を張る。

 ただ、スーパーラグビーのレベルは思っていた以上だった。
「とてもテンポがはやい。そのスピードに慣れていかないといけない。自分は体重があるので、もっと動けないと。それにスキルレベルも、これまでプレーしてきた環境とは全然違った」と向上を誓う。

 それでも前半38分には自らトライを挙げた。互いに攻め合い、長く続いた攻防を締めくくった。
「12番(自分の前にボールを持っていたCTB中村亮土)はいい選手。強いから、パスが来ると予測していたんだ」
 好球を受けて、「ラッキーマン」と笑う。

 まだバスケットから転向して日が浅い。「(ラグビーとバスケットは)ボールスキルで共通点はありますが、戦術や戦略についてはまだまだ学ばないといけない。毎日が勉強」と言う。
 しかし、この日はスクラムでも自分の役割を果たし、前週はペナルティを何度も取られたパックを安定させた。「ヤンブー(3番の山下裕史)が中心になって頑張ってくれた。時間を費やして準備し、お互いを理解することで、自分がやるべきことが明確になった」からだ。

 1万4499人のファンの前に立っての初試合。アゥォーンの声援を受けながらのプレーを「あの応援はすごい。ベーリーすごい」と気に入った。
 1試合でも多くプレーしたい。
「そのためにも、サンウルブズの選手としてもっとフィットすることが大事」
 始まったばかりの新たなチャレンジをとことん楽しむ。

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