国際リーグのスーパーラグビーに日本から参戦するサンウルブズは2月23日、東京・秩父宮ラグビー場での国内初戦に挑む。優勝経験のあるワラターズが相手だ。2戦連続でリザーブ入りする坂手淳史は、自身が最前列中央に入るスクラムに関して現在地を明かす。
16日、シンガポール・ナショナルスタジアム。シャークスに10-45で敗れた。序盤からスクラムで苦しんだ。坂手によれば、バインドと呼ばれる最初のつかみ合いで極端に圧力を受けた。そうなれば自ずと、互いがヒットする瞬間も差し込まれる。押される。
リザーブ陣が登場した後半途中からは、起点のバインドなどを修正した。おかげでいくつかのスクラムでは、「相手のプレッシャーも止められていた」と坂手は言う。
「相手との間合い(を改善)。バインドの際に下がらないよう、LO(2列目)とのコネクションも変えた」
次戦でも、「自分たちのスクラムを組みたい」という。
「前回も自分たちのスクラムを組めた時はボールも出せていました。今回、相手に合わせるスクラムはできるだけしたくないです」
ラグビーワールドカップトレーニングスコッド(RWCTS)のメンバーら日本代表候補はいま、RWCTSキャンプとサンウルブズのふた手にわかれている。今秋開幕のワールドカップ日本大会に向け、ジェイミー・ジョセフ ヘッドコーチの方針のもと強化を進める。坂手は、開幕からサンウルブズに帯同するRWCTSの1人だ。
サンウルブズのスクラムは前年までの2季、日本代表も教える長谷川慎スクラムコーチが指導。組み手の8人が低く、小さくまとまるのを肝としてきた。坂手の説明によれば、「いい形で固まったなか、どう(相手に)ヒットするかにフォーカスしていた」とのことだ。日本に多い小柄な選手のまとまりを活かせるとあり、選手も手ごたえを感じていた。
もっとも今季、長谷川コーチは2月上旬からのRWCTSキャンプ(都内)に帯同。それに伴い、サンウルブズはニュージーランド出身のマーティ・ヴィールをスクラムコーチに招いた。坂手は「(今季のサンウルブズのスクラムは)代表でやっているスクラムとは、180度違う感じ」と言う。
後列両端のFLの身体の向きは、長谷川式では組む方向に対して鋭角。かたやヴィール式では垂直だ。ふたつのシステムの違いについて、坂手はこう説明する。
「(サンウルブズでは)FLのつき方が日本代表と違い、(FLの前方に入る)PRがより真っすぐになれるというか。そのため、ヒットで前に出やすい。ただ、そこ(ヒットの瞬間)で相手に重さをかけられると(体勢が崩れるためか)コントロールが難しくなる。ギャップ(相手との間隔)のコントロール、レフリーとの間合いを考えながらやっていきたいと思っています」
代表強化を大義とするサンウルブズが日本代表と異なるスタイルを採り入れるに至った経緯は、現状では不明。ただ、現場は新たなエッセンスの注入を前向きに捉えようとしている。
坂手はいまのサンウルブズのスクラムについて、「新しいスクラムのいいところ、または日本代表でやってきて僕らがいいと思うものを組み合わせ、いま、作っている状態です。だんだん、よくはなっている」と説明する。RWCTSキャンプに帯同する長谷川コーチとも連絡を取り合っているようで、こうも続ける。
「僕らもまだこっち(サンウルブズ)のスクラムを完全に理解したわけではないのですが、慎さんとコミュニケーションを取っているなかでは『こっち(サンウルブズ)のスクラムのいいところを持ってきて欲しい』とも言われている。ワラターズはセットプレー的な(を重視する)チームではない。逆に僕たちがセットプレーで圧力をかけられれば、相手は後手を踏んでくれる。FWにとって、(スクラムは)大事だなと思います」
試合は13時15分キックオフ。進化の証を示せるか。