ラグビーリパブリック

激戦区制してワールドカップ出場へ。徳永祥尭は、無理なく完璧な滑走を目指す。

2019.02.14

ラグビーワールドカップトレーニングスコッドのキャンプに参加している徳永祥尭(撮影:松本かおり)

 落ち着いて勝負する。徳永祥尭は2月4日から、東京・キヤノンスポーツパークで実質的な日本代表候補合宿へ挑んでいる。ラグビーワールドカップトレーニングスコッド(RWCTS)の一員として、心技体を見つめ直す。

 身長185センチ、体重100キロの26歳は、器用でタフで嗅覚に長ける。2016年には7人制日本代表として、リオデジャネイロ五輪で4位入賞。以後は15人制へ専念し、2017年春以降10キャップ(代表戦出場数)を取得してきた。昨季までは2シーズン連続でサンウルブズ(スーパーラグビーの日本チーム)にも加わり、2019年のワールドカップ日本大会出場をにらんでいた。

 一時的な戦線離脱を決めたのは、昨年10月下旬。当時、首を怪我していたからだ。

 折しも日本代表は、世界ランク1位のニュージーランド代表、エディー・ジョーンズ元日本代表ヘッドコーチ(HC)率いるイングランド代表との対戦を翌月に控えていた。徳永もこのツアーの直前合宿に参加したが、なかなか痛みが引かなかったという。

 代表常連組の1人で同種の怪我を経験した堀江翔太に相談すると、「(強行出場は)よくない」と返答された様子。最後は自らの意志で、ジェイミー・ジョセフHCへ辞退を申し出たのだった。意志は固かった。

「100パーセントのプレーができないなかで評価されるという状態では、きっと自分もフラストレーションがたまったと思うので」

 以後はリハビリに専念した。東芝の一員として臨む国内のトップリーグでは、12月の順位決定戦を回避。2019年1月に入ると、カップ戦で実戦復帰を果たす。自身を除く多くのRWCTS勢が休暇を義務付けられるなか、復調ぶりをアピールできた。

 そして2月。最高のコンディションを作り上げながら、ワールドカップ行きの切符を目指している。

 キャンプ序盤のキーワードは「滑走路」。パスの反復練習の際には、堀川隆延コーチが「いまは飛行機でいうと離陸のイメージ。スピード、インテンシティ(強度)は高くなくていいけど、丁寧に、丁寧に」と選手に訴える。確かにワールドカップの期間をフライト中に例えたら、準備期間に求められるのは安定した「離陸」とそのための機体整備かもしれない。

 初日の練習後、徳永も「本当に滑走路という言葉通り」と頷く。

「ワールドカップの時にベストの状態になるために、ベースのスキルを大事にしている。練習の強度はそれほど高くないなかでも、大事にすべきことは大事にして頑張ろう、という感じで」

 サンウルブズに帯同していた前年までは、例年2月下旬開幕のスーパーラグビーを見据えて約3~4週間での調整を強いられていた。

 ただ今度のキャンプ参加組の試合期は、3月以降となる見込み。サンウルブズに合流してスーパーラグビーを戦うか、RWCTS主体のチームを作って海外遠征をおこなうかは、各選手の状態などによって決まりそうだ。

 徳永は「僕は11月の時に離脱したのでわからない(2019年春の詳細は聞かされていない)」と前置きをしつつ、2月は下地作りに注力したいとする。

「ゆっくり、ゆっくり、怪我人を出さないように。去年までであれば少ない回数しかできなかったウェイト(トレーニング)も多めにやって、下半身に負荷をかけたりしています」

 徳永の務めるFW第3列は、まさに激戦区だ。

 今回のキャンプには主将のリーチ マイケル、24歳にしてリーダー陣に入る姫野和樹、地上戦に強い布巻峻介、西川征克、突進力のある中島イシレリ、日本代表資格取得を狙う南アフリカ人のピーター“ラピース”・ラブスカフニが参加している。

 同時並行で活動中のサンウルブズには、ワールドカップ経験者のツイ ヘンドリック、代表資格取得前のラーボニ・ウォーレンボスアヤコにベン・ガンター、練習生としての参加からチャンスをつかんだ松橋周平がいて、代表予備軍のナショナル・デベロップメント・スコッドには身体能力の高い長谷川崚太も控える。

 そのため徳永は「何かしら、自分の売りを身に付けないといけない」と気を引き締めるが、「焦らずに…」とも続ける。

「いままでは焦ってやろう、やろうとするなかで怪我をしてしまった部分もある。ワールドカップまでの約230日、やるべきことはやりますが、無理はしない。リハビリもしながら、進めていきたいです。いま、身体の状態はすごくいい」

 ここ数か月は腰を据えて鍛えてきたとあって、首の筋肉を太くした様子だ。勝負の年は、「100パーセント」の自分をセレクションの俎上(そじょう)に載せる。

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