ラグビーリパブリック

【ラグリパWest】レクリエーションは花園で 第3回ラグビー・ドクターカンファランス

2019.02.14

試合の冒頭であいさつする外山幸正さん。関西協会医務委員長で今回の「第3回ラグビードクター・カンファランス」の世話人をつとめた



 花園は高校生のためだけにあるんやないんやでー。ちゃららーん♪
 可朝師匠、好きでした。

 冬でも青々としてる芝生の上を走り回ったのはラグビードクターたちや。
「関東から来たんすっけど、ここで試合ができるだけでうれしいです」
 花園は医師たちにとっても魅力的なラグビー場やったわ。

 年末年始の高校大会でマッチ・ドクターをつとめはった人もいる。グラウンドの両サイドに2人ずつ4人が控え、ケガが起こったら走る。安全面を支えるボランティアのおっさんたちが今日は主役になりましてん。

 2月10日、3連休の中日やったな。
「ケガのないようにやってや」
 世話人の外山幸正はんが声をかける。
 今年10月で古希を迎える整形外科医は、関西協会の医務委員長でもある。東は静岡から西は山口まで22府県を束ね、半世紀近くラグビー医療に携わってはるんや。

 先生、心配はご無用や。
 たとえケガをしてもあらゆる事例に対応可能。麻酔科も肩や脊髄の専門家もいてはる。この人らで総合病院開いたら大はやりや。

 レフェリーは織田信次はん。関西協会レフェリー委員会の副委員長をやってはる。
 えっ、関西のナンバー2を呼んだん?
「名前だけです」
 58歳の織田はんは謙遜する。
 外山はんは事もなげに答える。
「いい加減な笛を吹かれたらケガのもとや」

 みなさん三々五々集まってきて、自分らでアップを始める。キックオフは予定の11時を少しずれ込んだ。外山はんは言う。
「いい加減でええんや。ファジーにしとかないと楽しくない」
 さすがやねえ。このメリハリ。審判はトップを呼ぶけど、問題のないところはゆるゆる。これこそ人を救う医療やな。

 参加者は2チームに分れ、13人制で戦う。15分ハーフを3つこなした。
 試合は72-31。関西ドクターズの深緑×黒のジャージーを着た方が大勝した。
 ループ、イン返し、キックパスなど、現役も真っ青ってほどではないけれど、それなりのプレーも飛び出す。しかし、いかんせん持久力に問題あり。抜けた瞬間、声がかかる。
「ひとりで行ってー」

 最年長の外山はんも70歳以下を示す赤パンツをはいてピッチに立った。交代がいてないため、45分間出ずっぱりや。
「タックルされてもうたわ。赤パンにしたらアカンのになあ。まあ、しゃーないな。試合になったらわからんようになるし」
 汗をしたたらせながら、笑ってはった。


 グラウンド入口にかかっているAEDのお世話になる人はなく、無事に試合は終わった。
 中村明彦はんがあいさつをする。日本協会のメディカル委員長や。
「こういう場を続けて行ければ」
 この国のラグビーにおける医務方の実務トップはにこやかやった。
 最後は一本締め。「よーお」に続いて、みんなは大きく一回手を叩いた。

 ああ、着替えはテストマッチ用の2019ロッカー。ここは高校決勝など特別な場合にしか使わしてもらえへん。
 ジャージーの洗濯にはひかりやクリーニングの大将が控えてはる。
 試合のあとはスタンド裏にあるお好み焼き屋で反省会や。ビールが入った人もおって、フィリピンパブと医療の関連性について盛り上がってたわ。ドクターらの結束はさらに固まったって感じやな。

 この試合の参加費は1000円。グラウンドやロッカー使用料、反省会代を含めた残り「うん万円」は外山はんがもちはった。
「みんなが楽しんでくれたらええやないか」
 大阪・富田林(とんだばやし)で「とやま整形外科クリニック」をやってはる開業医はさらっと言う。大阪府協会の医務委員長、新井達也はんの言葉を思い出したわ。
「外山先生はラグビーのために私財を投げうってはります」
 ほんまやね。

 この試合は前日9日、大阪市内であった「第3回ラグビードクター・カンファランス」のレクリエーションとしての位置づけやってん。

 関東、関西、九州の三地域協会の持ち回りで年1回開催される。日本協会と大正富山医薬品の共催ですねん。
「自己研鑽とネットワーク作りですね」
 この試合にも顔を出した齋藤守弘はんは意義を説明する。日本協会の企画部付部長として切り盛りしはった。

 会議は医師免許があれば、3000円で参加可能や。ラグビー経験の有無や携わりは関係おまへん。講演として、「ワールドカップの医務体制」や「中高生の重症頭頚部外傷」などがあった。約150人のドクターが集まった。

 午後5時30分から始まった会議は、有志による3次会までもつれこんだ。おひらきは日付をまたいだ午前2時過ぎ。
「ミッドナイト・カンファランスになったわ。まあでも楽しかった。勉強もして、プレーもできてね」
 ホスト役の外山はんの声は弾んどった。

 今年、日本で初開催されるワールドカップも含めて、ドクターも協会もよりよい環境作りに努力してるんやで。
 今度、グラウンドで「DR」って書かれた深緑のビブスをつけながら走ってくるドクターがいたら、気軽に声かけたかってなあ。
 ああ、アカンわ。この人らが出て行かん方が試合はアクシデントなく流れてるってことやからな。

 楕円球を追いかけてるみなさん、どうかご安全に。

試合後に写真におさまるラグビードクターたち。前列左は織田信次レフェリー(関西協会レフリー委員会副委員長)、ひとりおいて日本協会の中村明彦メディカル委員長、その隣が外山幸正さん
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