ラグビーリパブリック

成長止めなかった日和佐篤が「心強い」。ワールドカップ3大会連続出場なるか。

2019.02.09

日本代表SHとして51キャップの経験を持つ日和佐篤(撮影:松本かおり)

 2月4~8日、ラグビー日本代表候補にあたる「ラグビーワールドカップトレーニングスコッド(RWCTS)」が都内で長期キャンプの1週目を実施した。

 ワールドカップに2大会連続で出場中の日和佐篤は、RWCTSの予備軍あたるナショナル・デベロップメント・スコッド(NDS)の一員として集合日の3日から合流。5日に組まれた走り込み練習では「それほど(息を)上げるものではなかったので」と飄々とトップを走る。淡々とエネルギーを放つ。

 サントリーから神戸製鋼に移籍加入した2018年度は攻守に活躍し、国内最高峰のトップリーグで優勝。しばらく遠ざかっていた国際舞台でも戦えるよう、成長を止めなかった。

「(神戸製鋼では)充実したシーズンを過ごせたし、パフォーマンスもよかったと思います。ただ、チームメイトに助けられた部分もあったと思います。ここからは代表にコミットしながら自分のパフォーマンスを出していきたいです」
 
 兵庫・報徳学園高、法大を経て2010年にサントリー入りした。当時のサントリーのゼネラルマネージャーで後に指揮官も兼ねるエディー・ジョーンズは、学生時代の日和佐を「あんなに素早くパスをさばけるSHは見たことがない」と高く評価。この時代の日本代表スタッフに「いますぐ代表へ入れるべきだ」と訴えたという。

 いざサントリーに加わった日和佐は、そのまま国内トップリーグの新人賞を獲得。2011年、当時の日本代表ヘッドコーチだったジョン・カーワンは、ジョーンズにプッシュされた際は「考えておく」とだけ言った若手SHを自らの眼で選んだ。

 テンポよいパスさばきを長所とする日和佐は、ここから51キャップ(代表戦出場数)をマーク。サントリーでは現役南アフリカ代表だったフーリー・デュプレアらと定位置を争いながら、ナショナルチームには常に選ばれてきた。

 2015年には、ジョーンズ率いるチームの一員として自身2度目のワールドカップ出場を果たす。イングランドの地で、過去優勝2回の南アフリカ代表などから歴史的3勝を挙げた。

 2016年以降は代表から漏れるも、矜持は乱さなかった。

「パフォーマンス自体は2015年から落ちたとは思っていないですし、今年(2018年度)はさらに上がったとも思います。国際レベルに対応する準備はできてきました」

 常に「国際レベルに対応する準備」を心がけてきたという日和佐は、新天地でも名手から刺激を受けた。共同主将で元ニュージーランド代表SHのアンドリュー・エリスに対し、「プレーを見ながら真似するところは真似してという意識でいました」。一例は、連続攻撃中のサポートだった。

 接点からパスを放つ。受け手が防御網を破ったところへサポートに入り、再び球をもらう…。エリスが得意なこのプレーを自身のものにすべく、フィットネスを強化した。

「いつ(味方が防御の間を)抜けるかはわからないし、抜けたところは確実にサポートしたい。そのためには絶対的な体力が必要」

 全体練習後は、本拠地の灘浜グラウンドを延々と走った。いつしか後輩のSHも影響を受け、一緒に汗を流した。スタミナをつけて動きの幅を広げた日和佐は、キャンプ集合日前日の2月2日、岐阜メモリアルセンター長良川競技場でのチャリティマッチに出場する。トップリーグ選抜の一員として、エリスのようなサポートプレーからトライを奪った。そして都内のRWCTSキャンプでは、自然な流れで上位クラスの運動量を披露した。

 日本代表のSH争いでは34歳の田中史朗、サントリー現主将の流大らが先頭集団を作っている。そのため、今回がジェイミー・ジョセフ ヘッドコーチ体制下で初の長期合宿帯同という日和佐は「崖っぷち。しっかりアピールするところはアピールする」。当落線上という立場を自覚する。

 一方、今年9月開幕のワールドカップ日本大会に向け「選ばれる、選ばれないに関わらず、私生活を含めチームにいい影響が与えられるようにしていきたい」とも話す。積み上げてきた実力を周りに認めさせながら、周りの雰囲気を良質にしたい。

 サントリー、神戸製鋼で切磋琢磨してきた世界的なプレーヤーは、チームマンとしても一流だったという。日和佐は「おじさん」という単語で周りを和ませつつ、こう言うのだった。

「おじさんになって(日本代表に)呼ばれて個人のことしか考えていなかったら、何してんねんと言われると思う。チームの見本になるようにはしたいです。いままで見てきたおじさんの選手たちがしてきたようにはしたい。精神的な成長。前回大会の時は自分のことだけで精いっぱいだったのが、少しは気配りができるようになったかな、と思います」

 キレは相変わらずとも、円熟味を増したとも見られる31歳。日本代表主将のリーチ マイケルからは、早くも「心強い。意欲がすごい」と頼られている。