ラグビーリパブリック

日立一高、部員15人の挑みは続く

2019.02.07
県決勝は28年ぶりとなった日立一。関東新人は初出場(撮影:日立一OB会)

県決勝は28年ぶりとなった日立一。関東新人は初出場(撮影:日立一OB会)

 2月9日に開幕する関東高校新人に、茨城県から初めて公立校がチャレンジすることになった。茨城県立日立一高の、部員はジャスト15人。相手は、1月の全国高校大会・準優勝校、桐蔭学園。まさに最高の相手との決戦になった。

 日立一は、県新人で決勝に勝ち上がり、茗溪学園と対戦、0-104と大敗したが、県2位で関東新人の出場権を得た。

 1月27日、水戸市サッカー・ラグビー場(ツインフィールド)で行なわれた茨城県新人大会決勝を振り返る。

 県大会で決勝に勝ち進んだのは28年ぶりのことだった。

 日立一は、準々決勝、準決勝で私立の県内強豪を連続シャットアウトした粘り強いディフェンスと、身長180cm以上が4人という高さを活かしたラインアウトを武器にファイナルに挑んだ。

 相手は花園の常連校・茗溪学園。日立一は2年生5人、1年生10人、リザーブなしの15人だ。1人のケガも体調不良も許されず、即棄権に繋がるなか戦いを続けている。

 日立一は、かつては吉野俊郎(早大)、吉沢和彦(筑波大)などの高校ジャパンや、早大で主将を務めた益子俊志などのタレントが揃い、茨城県高校ラグビー界を席巻していた。全国大会は5回、関東大会へは28回出場。県内公式戦111連勝の記録も残っている。

 しかし、近年は私立高の台頭や部員不足などにあえいだ。何度も訪れた廃部の危機を、OB、父母、学校との連携強化により乗り越えてきた。

 今回は、後輩たちの躍進にOB達も応えた。準決勝後の1週間は、LINEやFACEBOOKなどのSNSが沸騰し、チームカラーである「黒」でスタンドを染めようと、当日は県外からも続々と応援が集まり、多くのOBや関係者が、熱い記憶をたどりながら戦いを見守っていた。

 県決勝当日は快晴、日立一高のキックオフで試合開始。

 ピンチはのっけから訪れた。強い横風に押し戻されてノット10メートル、直後のセンタースクラムから左右に揺さぶられ、最後は茗溪学園WTBがトライ。次のキックオフは風を意識しすぎてダイレクトタッチになるなど、最初の5分で握りたかったゲームの主導権を引き寄せることができず、以後は防戦一方となった。

 前半を終了した時点で10トライを奪われ0-64。これまでの対戦相手にはないボディコントロールの巧みさと強さ、ハンドリングや展開力に最初は全く反応できなかった日立一高も、前半終了間際からようやくタックルの感覚を掴み、ゲームが落ち着きはじめた。

 惜しまれるのは、中盤でゴール前ラインアウトからモールを押し込み、コラプシングの反則を誘ったあとの場面。再度キックでタッチに出しラインアウトを得たが、ここからタッチライン際のサインプレーを選択、ハンドリングミスが出て得点はならなかった。

 スコアは0-104。経験、技術、体力のすべてにおいて茗溪学園が上回っていた。しかし県大会ファイナルという光景を目にしたことは、部員たちにとって大きな財産となった。

 各都県上位2チームが参加する関東新人大会はいよいよ今週末。2月9日10時30分、県決勝と同じ水戸・ツインフィールドに桐蔭学園を迎える。部員15人でつかんだその舞台には、さらに新しい世界が開けている。

FWは180センチ越えが4人と高さがある。関東新人1回戦で桐蔭学園に挑む(撮影:日立一OB会)