ラグビーリパブリック

「チャレンジJ9」キックオフ宣言。

2019.02.07
2003年8月9日、NZ戦のファンデルヴェストハイゼン。南ア代表キャップは89。188センチ、88キロの大型SH(Getty Images)

2003年8月9日、NZ戦のファンデルヴェストハイゼン。南ア代表キャップは89。188センチ、88キロの大型SH(Getty Images)

 2月7日、都内で「チャレンジJ9」キックオフ宣言と名付けた会見が開かれた。

 出席したのは、元日本代表主将・廣瀬俊朗氏、ラグビージャーナリストの村上晃一氏、帝京平成大学の井手口直子教授の3名。

 会見の最初に、廣瀬俊朗氏が宣言した。

「ラグビーを愛するものとして、全身の筋肉が徐々に失われていく難病ALS(筋萎縮性側索硬化症)の治療法と患者の方たちへのサポートのための寄付を呼びかける活動をはじめることを宣言します」


会見に出席したメンバー。前列・岡部宏生(ひろき)氏、後列左から村上晃一氏、井手口直子氏、廣瀬俊朗氏(撮影:BBM)

「J」は、17年2月6日に45歳の若さで他界した南アフリカ代表SH、ユースト・ファンデルヴェストハイゼン氏(Joost van der Westhuizen)の頭文字。「9」はポジションだ。故人は188㌢、88㌔の大型SH。1995年、南アフリカで開催された第3回ワールドカップで、南アフリカ代表として活躍。ニュージーランドとの決勝戦では、当時怪物と呼ばれたWTB ジョナ・ロムーの突進を止め、南アフリカ初優勝の原動力となった。

 現役時代は南アのプレーヤーオブザイヤーを6度受賞。まさに国を代表する名選手だったが、引退から5年後の2008年、ALSを発症。2011年に病を公表した後は、亡くなるまで病気への理解と治療法、研究開発のための活動を続けた。「J9」とはその活動を指し、現在は南アで彼の名前を冠せられた患者支援センターが作られている。

 

 ALSは原因は不明、治療法も確立されていない難病で、現在、日本には8300人の患者がいる。今年、日本で第9回目となるラグビーワールドカップが開催されることから、ユーストの遺志を継ごうと、プロジェクトがスタートした。今日からW杯決勝の行われる11月2日まで、山中伸弥氏が所長を務める「京都大学iPS細胞研究所」に2019円または20190円を寄付。寄付をしたらハッシュタグ#チャレンジJ9 で発信して、広めていってほしいという。

 井手口氏は15年から帝京大・岩出雅之監督、日本代表・エディー・ジョーンズHCらの協力を得て講演会を開催、寄付を募るなどALSを支援する活動を続けてきた。今年はW杯開催年であり、山中伸弥氏もラグビーと関わりが深いことから、今回の寄付先はiPS研究所にし、難病の治療法の解明に幅広く役立ててもらうこととした。

 会見にはALS患者である特定非営利活動法人ALS/MNDサポートセンター さくら会理事の岡部宏生氏も同席。氏は人工呼吸器をつけているため、メッセージが代読された。
「ラグビーとALSは両極端に感じることが普通だと思いますが、どちらもチームで支える事や前にパスできなくても、実は前に進んでいること、どちらに転がるか分からないことなど共通点がたくさんあるのです。ラグビーの精神は私たちも活きていくうえで、どうしてもやっていかなければならない事なのです(一部を抜粋)」

 廣瀬氏は「選手の立場でいたときは皆に支えられてきた。現役を退いた今、何か恩返しが出来ればと思うようになりました。僕は今38歳ですが、ユーストが発症したのも同じ歳。他人事とは思えない」と、発起人に名を連ねた理由を語った。

 プロジェクトは本日からスタート。2019円、20190円募金は11月2日までだが、現役選手たちの協力も得ながら、息の長い支援を目指していくという。

※寄付はchallengej9.netから、iPS細胞研究所ホームページ内「ご支援のお願い」でお手続きをお願いします。

2014年11月に撮影。氏を、ベン・ヤングらイングランド代表SHたちが囲む (David Rogers/Getty Images)