ラグビーリパブリック

「ワールドカップで全試合、3番のジャージーを着たい」。具智元の誓い。

2019.02.06

人あたりはソフト。押しは強烈。(撮影/松本かおり)


 愛嬌のある笑顔と精悍な表情。両方を交互に見せた。
 日本代表のPRで7キャップを持つ具智元(ぐ・じうぉん)は、2月4日から始まった日本代表ワールドカップトレーニングスコッド(以下、RWCTS)に参加しているものの、仲間たちとは別メニューの練習に取り組んでいる。

 先週、在籍するHondaでおこなった自主トレ中に右ふくらはぎを痛めたからだ。
「本当に軽いものです」と本人は軽症を強調するも、油断はしない。メディカルスタッフらと話しながら復帰時期を慎重に決めていく。
 ワールドカップが約7か月後に迫ったいま、無理をするわけにはいかない。ベストコンディションで大会を迎えることに集中する。

 ワールドカップイヤーに心が躍る。緊張もする。
「日本で大会をやると決まったときから、いちばん大きな夢になりました。今年は人生の中でとても大事な年」
 15歳の時から10年間抱き続けてきたビッグイベントへの想いを口にした。

元韓国代表PRで、かつて本田技研鈴鹿(現Honda HEAT)でもプレーした父・東春(どんちゅん)さんの教育方針のもと、小学6年時には兄・智允(じゆん/Honda HEAT在籍)とNZに留学し、ウェリントンカレッジで楕円球を追った。
 その後、大分の中学に学び、同地の日本文理大学附属高校に進学。高校日本代表選出後に拓大へ進むなど楕円球とともに生き、日本代表になる夢も叶えた。
 そんな道を歩んできたのだ。ワールドカップは人生の晴れ舞台に違いない。


 2018年度シーズンを振り返り、「成長できた」と笑顔を見せる。
「特に秋の遠征は自信になりました」
 世界選抜戦、オールブラックス戦への出場はコンディションが整わず逃すも、イングランド戦、ロシア戦で3番を背負い、責任を果たした。
「ただ、まだ成長できると思っています。もっと圧倒できるようにならないといけない」
 高い志を持ち、前進することを止めない。

 イングランド戦のパフォーマンスを回想し、改善点を口にした。
「前半はいいスクラムを組めたのですが、後半に相手が代わってから、1、2本、苦労したものがありました。対応力を高めないといけません」

 ワールドカップで対戦するアイルランドのスクラムについて警戒を強める。
「いいスクラムを組んできます。そんな相手に当たられてはいけない。8人で固まって、当たらせないようにこちらから仕掛けないと」
 頭の中はいつもスクラムでいっぱいだ。

 好感。大口を叩くことは決してない。ただ、9月に向けての気持ちを口にしたら熱くなった。
「開幕のロシア戦から、すべての試合に3番のジャージーを着て出たい」
 同じポジションには経験豊富な先輩たちもいるけれど、その実力をリスペクトしながらも絶対にスターターの座をつかむ覚悟だ。
「そのためには、まずケガをしないこと。できる限りの準備をしてワールドカップを迎えたい」

 昨年末は故郷・韓国に戻り、家族とともに年越し。ゆっくりと日々を過ごした。
 以前は帰省した際には、父からアドバイスを受けたり、近所の公園でスクラムの指導を受けることもあったが、「ジャパンになってからは、それもなくなりました。いまは応援してくれるだけ」と目尻を下げる。

 ただいま体重は、ベストの118キロ。「しっかり治して、(3月中旬から始まるRWCTSの)ニュージーランド遠征には参加したい」と先を見つめる。
 すでに獲得している7つのキャップは、すべて3番のジャージーを着てのもの。これからもそこへこだわっていくことが、きっとこの人のエネルギーとなるのだろう。

昨年11月のイングランド戦では多くのものを得た。(撮影/毛受亮介)