昨秋のテストシリーズでオールブラックスを破り、ワールドラグビーランキング2位につけるアイルランドは、現地時間2月2日、イングランドをダブリンのアビバ・スタジアムに迎え、20-32で敗れた。4トライを挙げたイングランドはトライボーナスポイントも獲得し、この日イタリアを33-20で破ったスコットランドと並び、勝ち点5となった。
昨年のこの大会では2勝3敗で5位に終わったイングランドは、「激しさ」を復調のキーワードに掲げる。キックオフの笛から、接点を叩き破りにかかるような激しい走りを連続。開始90秒でライン際にオーバーラップを作りだし、狭いスペースを駆け抜けたジョニー・メイ(WTB)が先制トライを挙げる。
闘将エディー・ジョーンズ ヘッドコーチに火を付けられたイングランドの選手たちは、ギリギリの線まで相手にプレッシャーを掛ける。12分には、トム・カリー(FL)がレイトタックルでイエローカードを受けた他、マロ・イトジェ(LO)が空中でのボールの競り合いでペナルティをとられるなど、この「激しさ」は、諸刃の剣とも見れる場面も。
対するアイルランドは、10分のジョニー・セクストン(SO)のPG、24分にラインアウトから接近戦でフェーズを重ね、キアン・ヒーリー(PR)がねじ込み、10-7と逆転に成功。
しかしながら、出足の速いアイルランドのディフェンスラインへの対策をしっかりと練っていたイングランド。29分には、エリオット・デイリー(FB)がゴールラインギリギリの位置へ転がる絶妙のゴロパントを転がし、アイルランドのジェイコブ・スコットデール(WTB)が処理をもたつく隙に自ら抑え、トライ。前半終了間際にはオーウェン・ファレル(SO)がPGを決め、10-17とイングランドリードでハーフタイムを迎える。
後半は、両軍ともに堅いディフェンスを保ち、膠着した状態が続くが、拮抗を破ったのはまたもイングランドの絶妙なアタッキングキック。65分のライン際からのメイのキックはアイルランド陣ゴールに転がり、いち早く追いついたヘンリー・スレイド(CTB)がトライ。スレイドは75分にも、逆転を狙い自陣から果敢に展開するアイルランドのロングパスを読み、インターセプトトライも挙げる。4トライを挙げたイングランドは、トライボーナスポイントを獲得した。
79分には、アイルランドは途中出場のジョン・コーニー(SH)がトライを返すが、時すでに遅し。大会優勝候補筆頭のアイルランドは、20-32で敗れた。
試合後、アイルランドのコナー・マレー(SH)は、「スタートが悪かったし、簡単なトライを与え過ぎた。最後の最後まで追いつく為に戦ったが、今日は自滅だ。何か、スイッチが入っていなかったのかも知れないし、イングランド相手にこれでは勝てない」と、悔しさをにじませた。
この日、試合を通じて素晴らしい活躍を見せたスレイドとデイリーについて、イングランドのジョーンズ ヘッドコーチは「ミスをしないBKの選手など存在しません。この2人はいい選手ですし、今日はいろいろと試してもらいたかった。ディフェンスラインの背後を狙うキックが、うまく決まりました」と振り返った。当のスレイドも、「今日はゲームプラン通りにうまく試合を運べた」とコメントしている。
アイルランドを優勝候補としながらも、各国の実力差は小さく、熾烈な接戦が続出することで知られるこの大会。波乱の幕開けとなった2019年大会だが、この後も多くのドラマが待ち受けているのは、間違いない。