稲垣啓太は、ラグビーワールドカップトレーニングスコッド(RWCTS)としてコンディションを整えている。
身長186センチ、体重116キロの28歳。2015年にイングランドでワールドカップに初めて出てからは、日本代表活動の前後に国内トップリーグ(パナソニックに在籍)、スーパーラグビー(日本のサンウルブズでプレー)に挑戦してきた。この国を代表する左PRとして、フル回転してきた。
年末年始は日本代表のトレーナー陣から「身体を動かすな」と言われていた。全ては2019年のワールドカップ日本大会で成功するためだったが、「動かすな」がかえって「難しかった」という。
「こんなに身体を動かさないことはなかった。最初は、ワールドカップを控えているのにこんなに休んで大丈夫なのかという葛藤はありました。でも、そこは割り切ってしっかり休むしかないと休みました」
もっとも時間が経てば、自らのリフレッシュを実感できたという。地元の新潟で新年を迎え、全国高校ラグビー大会や大学選手権を「いち観客」として見つめた。「動かすな」という指令の意味を自分なりに咀嚼(そしゃく)し、「ラグビーを、考えない」と意識した結果だ。
「ラグビーを、考えない。『これからどうしていこう』『今年はワールドカップ。課題を洗い出して、あれをどのタイミングまでに調整して』と考える作業を、止めたんです。でも、ラグビーを目にする機会はありました。花園での高校生の活躍を見て、間違いなく自分のラグビーの原点はそこ(出身の新潟工高)だと、改めて当時学んだことを振り返りもしました」
おかげで、年が明ければ「しっかり休むことの重要性を考え、感じられた年末年始でした。実際、疲れも自分の感覚の中ではだいぶ、抜けました」と淡々と話す。
4シーズン連続で加入したサンウルブズはすでにプレシーズンキャンプを実施中で、2月3日からは都内でRWCTSのキャンプが始まる。稲垣がいずれかの隊列に加わるタイミングは流動的だが、当の本人は「僕がコントロールできることじゃないので、上に任せています」。ワールドカップ2大会連続出場を目指すにあたり、復帰後の活動が重要なのだと話す。
「前回のワールドカップの時は、(直前の)ラスト1年に入ってから急激にチームが伸びた印象がある。(今回、残された)時間は少ないですが、ここからの伸びしろは計り知れない。それは、経験した選手がわかっていると思う。これから先の伸びしろをどれだけ増やせるかがキーになってきます」
知らずのうちに疲弊した心身を回復させてからは、9月20日の本番開幕まで貪欲に成長したい。