国内最高峰トップリーグのヤマハで15年プレーしてきた仲谷聖史が、今季限りで現役生活を終える。
身長170センチ、体重105キロという小柄な左PRながら、チームがこだわるスクラムで存在感を残してきた37歳。こちらも今年度で退任の清宮克幸監督に、最大級の賛辞を贈られた。
「仲谷は、日本で最も美しいスクラムを組む。間違いないですよ。違う表現で言うなら、相手を苦しませずに、締めることができる。うちには他にも仲谷と同じポジションの選手がいますけど、真似ができない」
大阪・島本高、立命館大を経てヤマハ入り。清宮監督が就任した2011年度以降、「またラグビーが好きになりまして」。29歳となった同シーズンはリハビリのため戦線離脱も、チームが醸す雰囲気に惹かれた。
「小さい身体でも、自分の役割を果たせば試合に出してもらえる」
清宮監督によれば、「彼は3回くらい僕に引退を告げて来た。『そろそろ…』『だめだ』と引き伸ばしました」とのこと。本人は続ける。
「清宮さん、わくわくするんですよね。ミーティングでも、次にどういうことを言うんかなと。こんなにおもしろいラグビーがあるのかと思ってやってきました。セットプレーという芯がしっかりあるラグビー…。自分にとっていい出会いだったと思います」
ブレイクしたのは2016年度。トップリーグ開幕時からスターターとして活躍し、11月には35歳で日本代表デビューを果たした。カーディフ・ミレニアムスタジアムのウェールズ代表戦(2016年11月19日/●30-33)など、4つのテストマッチを経験。この頃就任したてだったジャパンのジェイミー・ジョセフ ヘッドコーチは、他クラブの代表選手をスクラムで押すヤマハのベテランに魅せられたのだ。これには清宮監督も「感無量」だった。
ラストゲームは1月19日、埼玉・熊谷ラグビー場でのトップリーグカップ順位決定トーナメント2回戦だった。仲谷は1番をつけてフル出場し、豊田自動織機に35-31で勝つ。スクラムでは序盤こそ反則を取られながら、中盤以降は徐々に力関係を改善。試合終了前最後に組んだ1本でも、持ち味を発揮して相手のペナルティを誘った。組んだ本人は周りを笑わせる。
「前半は相手や、レフリングとの兼ね合いのためにずーっとしょぼーいスクラムを組んでいて、『うまくいかんなぁ』といろいろと修正していました。『世の中はうまくいかない』という教訓を得ました。でも最後は自分たちの強みを出して、ペナルティを取れた。終わりよければすべてよしということで、男のスクラムを組めました。ありがとうございました」
選手生命にピリオドを打つのを何度も思いとどまったことで、国際舞台を経験したのちにスパイクを脱げることとなった。あきらめないことで果実を得られた歴史が、引退試合の流れに重なった。