すぐにでも試合をしたい。キックオフが待ち遠しい。
紫紺のスクラムの要、3番を背負う祝原涼介(いわいはら・りょうすけ)はそう言った。
「2回負けている相手にリベンジできるチャンスです。楽しみです」
天理大には今年、春の招待試合(17-24)と夏合宿での練習試合(19-24)で負けている。それなのに前向きだ。
決戦前日、青空の下でリラックスしていた。
1月12日、秩父宮ラグビー場で天理大との大学選手権決勝に挑む明大。試合前日の11日は、午前11時から八幡山グラウンドで1時間弱の練習をおこない、決戦に備えた。フロントローで唯一の4年生の表情は明るかった。
「肉体的にも精神的にも、4年間でいちばんコンディションがいい。そんな状態で明日を迎えられて嬉しいですね」
チームの充実も感じている。「初めて(決勝出場)の人もいますが、昨年を経験している者も何人かいて、いい緊張感です」と話した。
昨年のファイナルにも出場している。その時は途中出場で、1点差の惜敗を経験しているから今年こそは笑顔で試合を終えたい。
勝負を分ける要素のひとつを「天理大の留学生への防御」とするが、自身に期待されるものをスクラムと明確に理解する。
「天理のスクラムは、バックファイブもすごく低くなって、前3人を押し出し、全員で同じ方向に力を向けてくる。こちらも8人がまとまって押したいですね。スクラムを武器にしてきました。その中でも(自分が)先陣を切ってやるつもりです」
明治ラグビーのエンジンはスクラム。強く自覚している。
天理大戦での2つの敗戦。そして、関東大学対抗戦で敗れた慶明戦と早明戦。今季のチームは、つまずきながらここまで歩を進めてきた。祝原は、それらの経験があったからこそチームが成長できたと感じている。
「(関東大学)春季大会で優勝し、帝京にも(春、夏、秋)と3回勝って、知らず知らずのうちに一人ひとりに隙ができていたかもしれません。でも、負けたことでコミュニケーションをより密にとるようになったし、意識も変わった」
シーズン当初は不安定だった「入りの20分」が大学選手権からは安定してきた。それも、チーム成熟を表すもののひとつだろう。
クライマックスの舞台で、充実と進化を証明したい。
4年間過ごした八幡山での最後の練習を終えて、やり残したことはない顔をしていた。
「きょうは確認が多く、軽い内容でしたが、本格的な練習だった昨日も、4年生たちの口から『最後だぞ』、『大事に』という声が出ていました。そういうものから、全員の思いも伝わってきた」
1月12日、1年間でなく、4年間のすべてをぶつける。