「自分たちはノーシードのチーム」(田中澄憲監督)
対抗戦で慶大、早大に敗れ、関東7番目のチームとして大学戦選手権では3回戦から出場し、2年連続となる決勝の舞台に這い上がってきたメイジ。
立命大、東海大、早大と、骨のある相手を連破して、22年ぶりの大学日本一に挑戦できるポジションまで上り詰めてきた要因のひとつに、SH福田健太主将、PR祝原涼介、FL井上遼、WTB高橋汰地などの4年生のリーダーたちの存在があるのは間違いないだろう。
その一方で、大学選手権に入ってから一歩一歩チーム力が上積みされてきた印象が強い明大だが、4年生のリーダーシップに応えるかたちで下級生たちの成長ぶりが紫紺のジャージに勢いと安定性をもたらしているのも確かだ。
天理大との決戦。田中監督は大学選手権準々決勝、同・準決勝と同じく、4人の2年生を先発メンバーとして送り出す。
片倉康瑛、箸本龍雅のLOコンビにCTB森勇登、そしてFB山沢京平。
このうち、片倉を除く3人は1年生ながら昨季の大学選手権でもプレー。さらに、昨年U20日本代表の一員としてフランスで開催されたワールドラグビーU20チャンピオンシップ5試合全てに先発。同世代の世界トップ選手たちと切磋琢磨した経験も誇る。
そういう意味では、下級生ながら4年生たちと並んで“復活メイジ”を引っ張る存在としてリーダーシップを発揮しなければいけない立場でもあったはずだが、そのパフォーマンスは今季浮き沈みが激しかったチーム同様、常に期待通りだったわけではない。
実際に、昨年までヘッドコーチとしてU20日本代表を指揮した遠藤哲氏の目にも、大学に戻ってからの3人のパフォーマンスは物足りないものに映っていたようだ。
「(U20代表としての活躍ぶりから見ると)メイジの3人は少し不甲斐ないなというか、くすぶっているように感じていた。それは、同じようにU20チャンピオンシップで活躍した天理大の5人と比べても明らかだった」
“無印”の片倉がラインアウトの核になるなど常にハードワークする姿勢を前面に出しながら紫紺のジャージの4番を守り続ける一方、箸本は大学選手権3回戦の立命大戦ではメンバーから外れた。
「自分のことしか考えていなかった」
箸本本人は、20歳になって初めての試合でもあった早明戦までの不甲斐ないパフォーマンスに関してそう振り返るが、メンバー落ちという厳しい経験も経て、再び重戦車軍団の中核として復帰した準々決勝の東海大戦、そして準決勝での早明再戦では、常に体を張り続けるプレーを見せて、2年連続となる大学選手権決勝の大舞台に這い上がったチームに大きな貢献をしてみせた。
「(立命大戦で外された後は)『チームのための自分』と考えて、責任持ったプレーをやらないといけないというところを意識した。まだ、満足はしてはいないが、前よりはディフェンスでの速い出だしなど、意識してできている」
そう語る188センチ、110キロの大型FW同様、決勝に勝ち上がる過程において本来のポテンシャルにふさわしいプレーを見せるようになっているのは、その箸本よりもひと回りもふた回りも小柄な森。やはり、昨年11月に20歳になったばかりだ。
12月2日の早明戦では、後半14、19分の早大CTB中野将伍の連続トライが試合の流れを決定づけたが、1か月後の再戦では明大BKのラインディフェンスはしっかり機能。
特に、早明戦では簡単にトライを許した後半の勝負どころで30フェイズ以上に及んだ早大のアタックを止め続けた。
「対抗戦では簡単に中野くんに2本取られたが、(準決勝では)僕らはひとりでディフェンスするんじゃなく、組織でディフェンスしようと準備していた。いいリンケージだったし、ラインスピードも良かった」
SH福田主将も最大の勝因に挙げた組織ディフェンス、森も回りとリンクしながらタックルを決め続けた。
「自分的には、タックルは体が小さくても通用した。ひとりでは難しい相手でも横とのコミュニケーションを取ってディフェンスできた」
U20チャンピオンシップでの経験をそんなふうに語る森だが、世界でつかんだ手応えをようやくメイジの一員としてチームに還元でき始めているのかもしれない。
前述のとおり、箸本、森と共にU20チャンピオンシップ全試合先発出場を果たしたFB山沢は、最後列に位置しながら感じる明大ディフェンスの成長ぶりを以下のように語る。
「前のラインの人たちがしっかり止めている。後ろから見ていても抜かれそうというのはない」
その山沢自身は、太ももの故障からの復帰戦となった東海大戦ではロングキックや卓越したボールキャリー能力で勝利の立役者のひとりとなったが、早大との再戦ではいきなりキックをチャージされて先制トライを奪われるなど、全てがうまくいったわけではなかった。
それでも遠藤氏が「空回りしていた面もあったが、それでもあそこまで目立てているのは、すごいこと」と評価するように、世界トップと対峙しても全く見劣りしなかった能力の高さを誇る山沢が最後の砦にいることが、メイジのラグビーの可能性を大きく広げていることは間違いないだろう。
前述のとおり、天理大には昨年フランスで箸本、森、山沢とチームメイトだった5人がいるが、その成長ぶりに関して遠藤氏は「自分のチームでもすでにハイレベルでのリーダーシップを発揮して、中心になっている」と、高く評価。
個々に見ても、箸本と同じポジションには、すでに日本代表キャップホルダーでもあるNO8ファウルア・マキシと共にパワフルな天理大FWの象徴でもあるLOアシペリ・モアラ、そして、13番はU20ジャパンではWTBに起用され、森がパスを出す対象だったCTBシオサイア・フィフィタが圧倒的な存在感を示しているし、早生まれの3年生としてU20遠藤ジャパンの主将を務めた167センチのFL岡山仙治、さらにU20チャンピオンシップ最終戦のアイルランド戦ではコンディション不良で先発から外れたことが勝ち切れなかった要因にもなったSH藤原忍は、共にサクラのジャージでも漆黒のジャージでもキープレーヤーであり続けている。
「ここ数試合でようやく本来求められるレベルに戻ってきた」(遠藤氏)という紫紺の2年生たちが、天理大U20組を凌ぐパフォーマンスを見せられるかが、22年ぶりとなる頂点獲りへの大きな鍵となりそうだ。