ラグビーリパブリック

「テーブルを作れ」「センスがある」。2018年度の天理大スクラムを支えた言葉とは。

2019.01.11

スクラムで前王者の帝京大を圧倒した天理大(撮影:矢野寿明)

 天理大ラグビー部は、スクラムを長所にクラブ史上初の日本一を狙う。1月12日、東京・秩父宮ラグビー場での大学選手権の決勝戦で、22年ぶり13度目の日本一を目指す明大とぶつかる。

 長らく天理大のスクラムを指導してきた岡田明久コーチは、小松節夫監督の天理高時代の同級生だ。今度対戦する明大のOBでもあり、現役時代はワールドのフロントローとして活躍。天理大に小柄な選手が多いのを踏まえ、反復練習によって低空姿勢の小さな塊を作り上げる。

「FW8人の背中の角度を地面と平行にすべき」という普遍的な経典は、「テーブル」の話を用いて浸透させた。

「学生には、常にテーブルを作れと言っています。テーブルがぐらぐらだったらいいスクラムにならない」

 2日の準決勝では、9連覇中だった帝京大を押しまくって29-7で勝利。トンガ出身の1年生LO、アシペリ・モアラも、膝の位置を地上1センチのあたりでキープ。「しんどい練習をずっとやっているので、(普段通りのスクラムを)試合でパッとできる」と笑顔を作った。

 キーマンの1人には、左PRの加藤滉紫が挙げられそう。専大松戸高出身の4年生で、身長172センチ、体重90キロという身体で天理大の形を体現する。

「バックローも膝の高さにこだわってくれている。僕ら1列の力だけではなく、後ろの押しがあるから(押せている)」と、モアラら後列の5選手に感謝。自らの好プッシュについて談話を求められると、これまでの継続強化が実ったのだと語る。

「去年は木津さん(悠輔/現 トヨタ自動車の右PR)など強い人たちが組んでいた。そういう人たちと(練習で)組めたことが、僕ら下の代にとっての財産になった。(前年度と比べ)特別変わったことはしていないですが、積み重ねがいまの結果につながっていると思います」

 最前列中央のHOは島根一磨主将が務める。FLから本格転向したてとあって苦戦も予想されたが、加藤は同期の星を「すごくセンスがある。のみ込みが早いです」と絶賛する。島根が「加藤はいろいろなスクラムに対して『こう組んだらいい』と教えてくれる」と話すなか、当の加藤は「僕が言っているのは口だけ」とし、こう続けた。

「HOというポジションは甘くないので最初はきついことだらけでしたけど、リーグ戦(加盟する関西大学Aリーグ)を過ごしていくなかで彼は強みをたくさん出した。本来はこっちの要求をのめないくらいの(浅い)経験値のはずなのに、それ(助言通りの組み方)をやってのけるのがすごい。僕らは互いにすごく寄り合って組む。それに耐えられないで、身体が曲がったりするHOもいるくらいです。でも、彼は真っすぐに立って全体をコントロールできる。ヒット(組み合う瞬間のスピード)も最近はよくなってきた。びっくりですね」

 名セコンドが提唱する形を、国際色豊かな陣容が実践する天理大。努力家で評判の島根主将の「センス」にも背中を押され、好結果を生んでいる。

 対する明大では身長184センチ、体重114キロの右PR、祝原涼介が「僕ら前3人がまとまって、相手の思う方向へ押させないようにしたい」と意気込む。大きくて強い明大と小さくて強い天理大とのバトルに、注目が集まる。