ラグビーリパブリック

「いつもいる」人の、タフさと信頼。

2019.01.07

初4強に輝いた流経大柏の屋台骨FL、木村倭(やまと)のトライ。チーム最後の得点となった(撮影:早浪章弘)

 1月5日。東大阪市・花園ラグビー場で行われた全国高校大会、千葉県代表の流経大柏は初めて臨んだ準決勝で、17-31で大阪桐蔭に敗れた。

 流経大柏の持ち味は強さと高さ、そして機動力。夏の全国7人制大会で優勝したのも、長身ながら器用さも走力も備えたFW選手の機動力が大きく貢献した。

 LOとFL、NO8。FWでバックファイブと呼ばれる5つのポジションで、花園の全試合に先発したのは3人だけ。2人の高校日本代表候補、星野竜輝(りゅうき)、八木澤龍翔。そして背番号7の木村倭(やまと)だ。

 177センチ、82キロ、均整のとれたがっちりとした体格だが、本人の自覚では、まだ小さい。尽きぬ運動量と仕事量で周囲の信頼を集めてきた。

「身長はまだしも、体重的に足りない」と木村。

 それは一面、努力の賜物でもある。周りの選手と同じくたくましいプレーぶりが光るが、「運動量を増やせるように」と、単に体重だけが増えるのは抑えている。しつこいディフェンス、地道で嗅覚鋭いサポートがその成果だ。

 LO、NO8を務め華のある動きを見せた星野はリュウケイFWの顔、そんな万能型選手とは対極のプレーに懸けた木村が、全試合で背番号7を着けた。3回戦の京都成章(前半25分まで)、準々決勝・常翔学園と、コンタクトの重いチームとの試合を越え、試合後のケアにもていねいに取り組み、ケガなくしのいできた。

 最後の試合となった大阪桐蔭戦、木村のテーマは、相手FL、重戦車・奥井章仁(あきと)を止めること。密集脇にはいつも身を低くした戦闘態勢の木村がいた。

「上にいくとそのままドライブされる。絶対に下に入る」

 下に刺さり続けた。しかし、本人には悔しさが残る。

「上から乗られて、食い込まれてしまいました」

 躊躇はなかった。タックルは相手のヒザほどの低さ。それでも彼が自分に課した役割は果たせなかった。

 12-31で迎えた後半29分、流経大柏がスコアしたトライでロングゲインを遂げたのは2年生・篠澤輝(ひかる)のラン。BKのような素晴らしい突破とステップだ。篠澤は後半13分からPR石水健太とともに途中出場、強いタイプから動けるタイプの選手へのスイッチはこの日の戦略上の交代だった。

 そして、最後にインゴールに飛び込んだのは「いつもいる」背番号7だった。

 自陣からゴール前まで走った篠澤を、冷静にサポートし、直前に投入したばかりのSHがさばいたボールを受け右隅でトライラインを超えた。リュウケイの7番、今大会唯一のトライがチームのラストトライになった。

 表情を変えず、走って自陣に戻った木村。欲しかったのはトライよりも、次の試合の7番のジャージーだったのだろう。絶望的な点差と残り時間のなか駆け寄った仲間の顔に、寄せる信頼の大きさが表われていた。進学先は流経大。フィールドは先へ広がっている。

Exit mobile version