ラグビーリパブリック

欲しかったものつかんだ。東京学芸大、全国地区対抗大学大会で優勝。

2019.01.07

2トライと活躍の東京学芸大の1年生、LO安達拓海。(撮影/松本かおり)

 泥臭く。
 意識してそうしているわけではない。やれることを必死でやり続けたら、そうなった。
 枯芝と土にまみれた水色×白の段柄ジャージが拳を突き上げたのは後半42分頃だった。背番号5のLO安達拓海がラックから持ち出したボールをインゴールに押さえ、歓喜の瞬間が訪れた。

 1月6日、パロマ瑞穂ラグビー場。第69回全国地区対抗大学大会で東京学芸大が5年ぶり2度目の優勝を手にした。
 名古屋学院大相手に30-29。ラストプレーで逆転勝ちした。

 先手は東京学芸大がとった。
 前半8分、ラインアウトからの攻撃の途中、SO熊谷颯斗が防御を突破、CTBの高橋建仁へ。鮮やかにトライを奪った(ゴールも決まり7-0)。立ち上がりから、積極的に攻める姿勢が伝わった。

 個々の力強さでは名古屋学院大が上回っていた。体格もパワーも。
 だから赤いジャージーはスクラムでも圧力をかけた。個で攻めても1対1で優勢。ただ、そうだからなのか、勝利への道を絞り切れていないように見えた。

 前半は東京学芸大が10点、名古屋学院大が12点。名古屋学院大の得点はキックレシーブ後のカウンター攻撃から攻略したものと、PK後のラインアウト→モール→ラック→ピック・ゴーで奪ったもの。強みを活かして切れていなかった。
 パワープレーで、もっと勝負に徹してもよかった。

 後半も同様の展開が続いた。
 東京学芸大はFWが武骨に体を当て、自信のあるBKが外勝負で前に出る。そうやって敵陣に入っておいて、最後は我慢強くFWでトライを追加した。
 4分にLO安達が押し込み、17分はWTB山中宣里がアウトサイドを走る。22分にはPR八山隆優斗がゴール前の壁を破った。
 後半早々に逆転。再逆転されるも、もう一度ひっくり返し、引き離す展開に持ち込んだ。

 名古屋学院大は一人ひとり自信があるから、アンストラクチャーの状態でボールを手にしたチャンスに力を発揮した。
 後半7分、ラインアウトからフェーズを重ねた後、FB鈴木良太がトライ。17-25と離されそうになった27分には、WTB吉川晨がインゴールに入って追い上げた(22-25)。
 そして35分のトライは自陣深くからいっきに攻め切ったものだった。相手のミスからボールを手にするとSH牧山巧樹が走り、FB鈴木へ。ゴールキックも決まって逆転(29-25)したときには、そこにいる多くの者たちが勝利を確信した。

5年ぶり2度目の優勝。将来、指導者になる者も多数いる。(撮影/松本かおり)

 しかし、幕切れは冒頭のシーンだった。
 東京学芸大は残り5分で逆転された後、ボールを持ち続けた。土壇場でもBKは積極さを失わず、FWは体を張り続ける。相手のミス、反則もあり、ジリジリとトライラインに迫る。最後はPKからFWが固まって前に出て、187センチの巨体がトライラインを越えた。
「最後は(2015年ワールドカップでの日本代表の)南アフリカ戦じゃないけど、絶対に取り切ろう、と。ボールをキープして、近場で体を当て、寄って…。試合の中で、やれると感じていました。準備してきたことをやりました。下級生たちがよくやってくれた」
 喜ぶWTB倉林淳主将の顔には、あちこちに傷があった。

 ケガ人も出て、この日メンバー表に名前があったのはリザーブも含めて21人だけ。4年生が3人しかいないチームが1年間目指してきたものを手にした。
 強豪・桐蔭学園の出身者も数人いるけれど、高校時代にばりばりのレギュラーだった選手はいない。殊勲のトライを決めたLO安達も高校時代はラグビー部の応援団長で、同部唯一の中学までラグビー未経験だった男だ。
 勝者は気持ちで勝利をつかんだ。

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