ラグビーリパブリック

長崎県選抜の小さなWTBたち。全国ジュニア大会で個性を発揮。

2019.01.01

ステップとランで防御を翻弄する川久保瑛斗。(撮影/松本かおり)

 小柄なふたりのWTBがそれぞれ得意なプレーを出した。
 12月31日に神戸総合運動公園ユニバー記念競技場でおこなわれた全国ジュニア大会。第1ブロックの7位決定戦で、長崎県代表が兵庫県スクール代表を46-0で破った。
 大阪府中学校代表に17-22、大阪府スクール代表に5-24と惜敗し、悔しい思いを胸に臨んだ今大会での最終戦。長崎県代表は自分たちのスタイルを出して快勝し、2018年最後の日を笑顔で締めくくった。

 決して大柄な選手はいない。小柄ながらも、スピーディーな攻撃と低いディフェンスで大きな相手に立ち向かう。それが長崎ラグビーの伝統だ。
 その流れは、今年も継承されていた。
 小さな選手たちが多い中でも、先発した両WTBは特にそうだった。川久保瑛斗(かわくぼ・あきと)と計屋英史(はかりや・あきふみ)は、大会プログラムによると、ともに150センチ台後半。しかし、それを感じさせない働きを見せた。

 川久保は昨年から長崎県代表に選ばれている。その力をこの日も出した。
 前半8分、右タッチライン際。スピードに乗った状態でパスをもらうと、そのままディフェンダーを振り切って先制トライを奪う。チームに勢いをもたらした。
 セブンズユースアカデミーにリストアップされたこともある好ランナーは、そのシーンを振り返って言った。
「得意な形でボールをもらえました。チームは大会の組み合わせが決まった後、大きな選手たちが揃う大阪に勝つための準備をしてきました。大阪のチームには勝てませんでしたが、きょうはそれが活きた。全員でやってきたラグビーを実践したから勝てました」
 自身も、得意のステップで相手を抜く場面が何度かあった。

 川久保は小学校4年生の時、友だちに誘われて時津ラグビースクールに入った。所属クラブでは、普段はFBでプレー。「小さいから低くタックルできます。アタックでも、相手が覆いかぶさってくるところを越えていける」と話す。
 長崎北陽台高校に進学予定だ。
「高校ではSHをやりたいな、と思っているんです。好きな選手は(オールブラックスの)アーロン・スミス。空いているスペースに鋭くパスを放ると同時に、自分でも仕掛けられる。ああいう選手を目指しています」
 将来はトップリーグの強豪でプレーし、日本代表になりたい。

計屋英史はコンタクトプレーが得意。(撮影/松本かおり)

 一方の計屋は華麗なランニングより、コンタクトプレーを好む。
 この日もWTBの背番号を背負いながら積極的に体をぶつけた。チームの狙いは『6人目のFW』だった。
 所属する長崎ラグビースクールではHOでプレーしている。兵庫戦でもセットプレー以外の時はFWの近くで体を張った。
 ライン際を走ってきた大柄な相手と1対1になったシーンもあった。バチッと一発で仕留めた。自分の得意プレーを「タックルとオーバー」と話す。

 九州歯科大でラグビーをプレーしていた父・英俊さんと母、アイベス・シモーヌさんの間に長崎で生まれた。4歳のときにラグビースクールに入る。
 ハードタックラーを目指す。
「父のように、相手を押し戻すようなタックルをしたい」
 高校でもラグビーを続ける予定だ。
 小柄ながらもとことん走り、タックルしまくる豪州代表主将、マイケル・フーパーに憧れている。

 小さなふたりが抱く夢は大きい。秘める可能性も同じ。
 そこにラグビーの大きな魅力が詰まっている。