マネージャー業をひとりで頑張ってきた。熊本西(熊本)の唯一のマネージャー・米村美咲(3年)は、花園初戦で惜敗した仲間たちへ「2年連続で花園に連れてきてくれて、ありがとう」と語り、最後は笑顔を見せた。
12月27日に開幕した第98回全国高校ラグビー大会の1回戦で、2年連続11回目の熊本西は、2年ぶり17回目の札幌山の手(南北海道)に19-27で敗戦。後半21分のトライで5点差に迫ったが、札幌山の手が3分後にPGを成功させ、逃げ切った。
熊本西の仲間とロッカールームへ引き揚げながら、米村マネージャーは泣いていた。自身も元プレイヤーだから、ラグビーの痛みも敗戦の痛みも知っている。
小学5年から熊本の女子チーム「SWEETIE LADY BEARS (スウィーティー・レディー・ベアーズ)」で、FWとしてプレー。高校からはマネージャーに専念してきた。
「高校入学前は他の部活に入ろうかなと思っていたんですけど、『高校ラグビー楽しそうだな』と思って、入学してから決めました」
しかしマネージャーは自分ひとり。高校卒業後の選手復帰も視野にあるほどのラグビー好きだが、相手は屈強な男子部員。「手伝ってほしいときとか、指示をみんなに伝えるときは大変でした」。
苦労した記憶として残るのは“ソーメン作り”だ。
「去年はプロテインが入ったソーメンを作っていました。毎日みんなが練習している間に、40人分くらい作って食べさせていました。慣れたら1時間30分くらいで作れます」
慣れても1時間半かかる約40人分のソーメン作り。それを通常練習で毎回行っていたという。
しかし昨年度はその甲斐もあり、6年ぶりに花園出場を果たした。2回戦で12-57のスコアで敗れたものの、相手はその年の頂点を極める東海大仰星(大阪第2)だった。
そんな昨年度から始まったリーダー制は、今年も健在。
主将制度を廃止し、グラウンド内外に『FWリーダー』や『学習リーダー』といった12のリーダーを置いている。
試合ではゲーム主将という肩書きのCTB志水篤(3年)は、「リーダーたちがさまざまな視点からチームを運営していく形です」と胸を張った。
「基本的に3年生が運営をやって、2年生が実務をします。1年生はその姿を見ながら1年間学ぶという形です。去年からリーダー制になって、一人ひとりが考えて行動できるようになったと思います」
新たな運営スタイルが、ピッチでの思考力につながっている。
「チーム全員が考えることで、グラウンドの中でも考えてプレーすることができると思います」
そんなゲーム主将のCTB志水に、同期の米村マネージャーが口にしたありがとうを伝えた。表情が綻び、こちらも最後は笑顔になった。
「大変なことがあっても、ひとりで頑張ってくれていました。いまも勉強もしながら練習に顔を出してくれたり……。勝って感謝の気持ちを伝えたかったですが、勝つことはできませんでした。ただ感謝の気持ちは伝えたいと思います。3年間一緒にやってきました。こっちが、ありがとうです」