こんなにやれるとは思っていなかった。
年明けにカップ戦がまだ残っているものの、順位決定戦、入替戦まで終わり、ひと段落のトップリーグ。12月23日におこなわれた栗田工業との入替戦に75-0と圧倒した宗像サニックスのCTB森林啓斗(もりばやし・けいと)は、ルーキーイヤーを振り返って冒頭のような言葉を口にした。
大阪体育大学からチームに加わって1年目。リーグ戦、カップ戦、順位決定戦、入替戦の全14試合中12試合に出場し、10試合に先発。多くの試合をCTBでプレーした。
大学3年時、4年時と、チームは関西大学Bリーグが戦いの舞台だった。卒業後、どうしてもトップリーグでプレーしたかった森林にとっては不都合な状況。各チームのスカウトに見てもらえる機会がなかった。
思いは断ち切れなかった。大学で5年目を過ごすことにした。
チャンスが訪れる日を待ち、宗像サニックスの練習に参加する。トライアウトを経て入団に至る。
武器になったのは、大学時代から人一倍熱心に取り組んできたウエートトレーニングで得た強い体躯だ。
「タックルが得意。そこで勝負したい」
ルーキーイヤーの春からそう言えた。
しかし、「春シーズンの中で、まだまだ足りない。もっとやらないといけない。試合でも練習でも、それが明確になりました」という現実もあった。
そこから成長できたから本番の秋シーズン、多くの出番を得た。
「最初はすべての局面で力が足りないと感じました。特にスキル、その精度が足りないと感じました。体の強さにしても、専門のS&Cコーチからトレーニングを受けて、その部分が伸びたからこそやれたと思います」
プロフェッショナルな環境に感謝する。
成長の理由を「周囲に恵まれました」と話す森林。特に刺激を受け、いろんなことを教えてくれたのが同じポジションの選手たちだ。
サンウルブズで活躍するジェイソン・エメリー。南アフリカ代表のアンドレ・エスターハイゼン。
「試合で助けてくれるのもそうですが、そういうレベルの選手たちとの日常的な練習がすごく勉強になりました。いろんなことを教えてもらったし、強度やスピードに慣れていきました」
シーズン前に「1年目から公式戦に1試合でも多く出たい。強味を出しつつ、足りないところを高める日々を送りたい」と話していた通りの成長曲線を描けたものの、「こんなにやれるとは」は本音だ。
大勝した入替戦の試合後は、「ディフェンスの場面が少なくて、自分の強みであるタックルを出せるシーンが少なかった」と話すも、来季もトップリーグで戦えることが決まり、「素直に嬉しい」と安堵した。
初年度の活躍が明るい次シーズンを約束していないことも理解している。
「もっともっとすべてのことをレベルアップしないといけないと思っていますし、もっと高められる」
安心も慢心もない。
ニックネームはモリバ。トップリーグでは数少ない徳島県出身者である23歳は前向きだ。
「自分が試合に出ることやプレーで、地元の高校生たちがラグビーを始めたり、頑張ることにつながると嬉しいですね」
自身がラグビーと出会った母校・城東高校の後輩たちは、昨年に続いて今年の冬も花園の芝を踏む。3年生のCTB、春木篤司は『花園ガイド』(ラグビーマガジン2月号別冊付録)の目標とする選手の欄にモリバの名を書いた。
今後その名を書く後輩の数が増えていくことは、180センチ、92キロのOBの成長を示すことにもなるだろう。