12月22日、東京・秩父宮ラグビー場。今季創部100周年の早大は、大学選手権の準々決勝で慶大から逆転で白星を奪った。
15-19と4点差を追っていたノーサイド直前。敵陣中盤左の相手ボールスクラムで慶大が反則を取られると、早大は敵陣ゴール前に進んでラックを連取する。慶大のさらなる反則によるアドバンテージを受け、BK陣の並ぶ右オープンへつなぐ。4年生WTBの佐々木尚がトライを決め、20-19とした。劇的な展開で、5大会ぶりの全国4強入りを決めた。
「あそこはFWがしっかり戦ってくれて、最後はアドバンテージを取ってBKで仕留められた」
味方に感謝するのは、攻撃の起点となった齋藤直人だ。春にはジャパンAの一員としてスーパーラグビーの予備軍とも戦った3年生SHは、スクラムとラックでハードワークしたFW陣の献身に感謝する。
当の本人も試合を通して相手司令塔へのキックチャージ、防御ラインのやや人数調整などでスピードと声を活かす。持ち味とする緩急自在の球さばき以外の領域でも、組織の活力を保った。
もっとも、この人は謙遜心の塊だ。桐蔭学園高時代からの同級生であるFLの柴田徹にも「まったくおごりがない。誰よりも練習して、ウェイト(トレーニング)をして。それは気合いが入っている時だけとかではなく、ずーっと、なんです」と認められるほど。だから今度のゲームを受けても、「自分の体感的には身体が重くて…」と首を傾げる。
自身が任されるゴールキックが5本中2本の成功に止まったことも、悔しい限りだろう。この件を問われれば「…聞いて欲しくないっす」と言いつつ「あ、大丈夫です」。11月23日にあった関東大学対抗戦での同会場同カードにおいても3本中1本と手を焼いていたため、こう自省した。
「前回の慶大戦と同様、自分のキックが決まっていれば…ということは試合中も思っていて。(試合前に)準備をしていなかったわけではないのですけど、結果としてこうなったのは準備が悪かったのか…。結果が全てだとは思うので、準備の仕方をもう少し変えて、明大戦は決めたいです」
齋藤の言葉通り、1月2日に秩父宮である準決勝では、昨季準優勝の明大とぶつかる。
「(自身が)理想としているプレーは、まだまだこんなもんじゃないと思っている。準備、していきたいです。一歩、一歩成長していくというなかでも、負けてしまったら(その道のりは)終わってしまう。きょう、プレー面で成長できたのかはわからないですけど、こういうゲームをものにできたことは(チームにとって)何かしらの自信にはなると思います」
反省の弁が自己否定に陥らず、「まだまだこんなもんじゃない」という自己肯定につながっている。そこが妙味だ。