ラグビーリパブリック

早大が慶大に連勝。「4年生の力」が出るまでの道のり。

2018.12.24

大学選手権準々決勝の慶應戦で先制トライを決めに行く早稲田の佐々木尚(撮影:松本かおり)

<第55回全国大学ラグビー選手権大会 準々決勝>
慶應義塾大学 19−20 早稲田大学
(2018年12月22日/東京・秩父宮ラグビー場)
 ノックアウトステージの準々決勝で11月23日以来の再戦。早大が慶大に連勝した。前回は前半に先行し21−14と逃げ切っていたなか、今度は試合終了間際の逆転勝利を挙げた。
 4強入りした早大SOの岸岡智樹は、両軍を称えながら言う。
「慶大さんにはいくら反省しても次がないなか、僕らは次につながる一歩を踏み出せた。その意味では大きい」
 慶大は外、奥の空間を活用。向こうの鋭く前に出る防御と、接点周辺での激しいタックルをかいくぐるためだ。SOの古田京主将は言う。
「外を使おうと。裏のスペースもあると確認していました」
 蹴った後は、地域獲得のキーマンだった岸岡へも鋭く圧を与えた。前半8分、その岸岡へのキックチャージからWTBの宮本瑛介がトライ。直後のゴール成功で7−5とした。
 その後は一時7−12とされたが、後半15分、ハーフ線付近左でペナルティキックを得るや右へ展開。敵陣ゴール前に入ると左へ球がつながり、最後はNO8の山中侃がフィニッシュ。同点に追いつく。
 12−15と勝ち越され迎えた20分頃には、交代出場したCTBの南翔大のキックで早大の防御の裏を突く。
 カバーに回って捕球した早大FBの河瀬諒介は、「前半にチャージからトライされていたことがよぎってパスをできなくて…」。慶大のチェイスの網へ自ら突っ込んだ結果、味方の援護役が反則を取られた。慶大は24分、敵陣ゴール前右中間でのスクラムから古田主将がトライ。19−15。計画の妥当性がスコアに表れた。
 その間、早大も力は発揮した。特に、慶大が警戒していた防御で光る。
 2点差を追っていた前半24分からの約5分間、自陣ゴール前で計32フェーズもの攻めを耐える。FLの幸重天は刺さっては起き上がり、最後はインゴールに回り込んでトライを防いだ。途中、相手の落球がレフリーの目に入らなかったなどの不測の事態にも、心を乱さなかった。
「ああいうところで働かないと。ディテールを細かくやっていこうと、意思統一できていた」
 逆転を狙う終盤は攻撃中のミスに泣くも、岸岡の具体的な反省の弁がかえって充実ぶりをにじませた。
「防御でFWが消耗しているのに攻撃でFWフェーズを選択してしまった。本来は全員がリンクした攻撃をしたいので、(今後は)それを洗練できればと思います」
 両軍が爪を立て合って迎えた後半38分、早大HOの峨家直也が、ラインアウトの球をまっすぐ投げ入れないノット・ストレートの反則。プレーは慶大スクラムに移る。
 この日スクラムは慶大が終始優勢。勝っていた側は逃げ切りの体勢に入れそうだった。ところがこの重要な一本で慶大が崩れたとして、早大がペナルティキックを得る。
 慶大の某選手いわく、この日のスクラムは「組めば押せた」。重要局面では多彩な笛を吹かれ、「組ませてもらえなかった。それが問題でした」とこぼすほかなかった。
 青春の行く末が笛に左右されたとしたらただ悲しいのみだが、早大は早大で峨家いわく「相手より低いところで組み、プレッシャーを」。こちらが自力で勝つべく、工夫を凝らしていたのも確かだった。以後、逆転トライまでの連続攻撃を開始させた。
 止めを刺したのは佐々木尚。前半3分に先制し、同11分頃にはトライを防ぐタックルを決めた4年生WTBだ。途中、担架で運ばれそうになりながら最後まで奮闘した。
 死線を超えた河瀬は言う。
「自分のミスでチームを苦しくしたのですが、4年生の力にはすごいものがあると感じました」
 ヨネンセイノチカラ。あらゆる意味で一貫性の担保が難しい学生ラグビーのゲームにおいて、普遍的な勝因と見られている。
(文:向 風見也)
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