東海大との準々決勝前半、自らのビッグゲインでWTB山崎のトライを引き出す明大FB山沢。
攻守に存在感の大きさを見せつけた(撮影:出村謙知)
やはり、兄とともに将来の日本代表を背負っていく存在としても期待のかかるこの男が、重戦車FWのはるか後方で砦を守るように最後列にいると、紫紺のジャージBK陣には安定感と、何よりも危険な香りが倍増する。
「京平が15に戻ってきてくれて、みんなを落ち着かせてくれた。ロングキックでも対抗してくれたし、ランでもチームを救ってくれた」
そんなふうに、3試合ぶりに復帰したFB山沢京平という存在の大きさについてチームを代表するかたちで口にするのはSH福田健太主将。
実際、後半30分に15ー15の同点に追いつかれた後、本当の真価が問われる時間帯に敵陣でミスなくボールキープを続けたFW陣の頑張りに応えて決勝PG(後半40分)を決めただけではなく、試合の流れを決定づけた前半33分のWTB山崎洋之のトライも、自陣から仕掛けた山沢が相手ディフェンスを切り裂いてロングゲインを稼いだ後、ドンピシャのタイミングでラストパスを通した末に生まれたものだった。
「(決勝PGの場面、プレッシャーは)別に感じなかった。(前半のトライにつながったランは)行けると思った。思い切って行けた」
今季のトップリーグでベストフィフティーンに選ばれた兄・拓也(パナソニックSO)同様、決して多弁なタイプではないが、プレーの端々から見せる将来的な可能性もまた兄に引けを取らない一級品だと断言していいだろう。
昨季は1年生ながら紫紺のジャージに袖を通して15番を背負い、19年ぶりに大学選手権決勝進出を果たした明大復活劇の欠かせない1ピースとして活躍。この夏はU20日本代表の不動のFBとして世界トップレベルを体感した。
当然、この冬、22年ぶりの大学日本一奪還を目指すチームのキーマンであることは疑いようのない事実だったが、右足太ももを痛めて早明戦と大学選手権3回戦の立命大戦は欠場。
ここ2試合、不安定さも垣間見せていた明大BK陣が、この日はCTBアタアタ・モエアキオラという大学シーン最強ランナー率いる東海大相手に、決定的に破綻する場面がなかった大きな理由のひとつに山沢復帰があったことは間違いないだろう。
「外側でボールを持った時に効果的なゲインができなかった。前半、ミスがあったし、判断もダメだった。もっと突き詰めていかないと」
本人自身は、この日の復帰戦でのパフォーマンスに関して納得できてはいない様子だったが、その一方で、「あの(U20代表での)経験は間違いなく生きている」と、半年前に10代で世界トップを体感してきたことによる成長は実感してもいる。
「早稲田も蹴ってくるので、まわりとコミュニケーションをとって、キックでも負けない。ボールキャリーでも前に出られるようにしたい」
早大との再戦となる大学選手権準決勝。
明大フィフティーンの多くは、12月2日に思うようにプレーできなかったことへのリベンジを誓う。すなわち、3週間前に70点だったり、50点だったり、あるいは30点だったりと自己評価したそれぞれのパフォーマンスを1月2日には各自が「100点」に近づける――そんなメンバー全員のパフォーマンスの向上が、早大に届かなかった4点差を引っくり返す根拠につながるとするなら、早明戦時不参加=「0点」だったと言っていい山沢の復帰は、明大にとって圧倒的なプラスファクターとなる可能性は十分だろう。
12月22日、大阪・キンチョウスタジアム。“アタアタのいる東海大封じ”がそれを証明した。
(文:出村謙知)