ラストワンプレー。タッチラインの外へボールを蹴り出そうとする神戸製鋼のリチャード・バックマンに、サントリーの松島幸太朗が猛チャージ。ネバーギブアップの精神を示したが球には触れられず、5−55で敗れた。
12月15日、東京・秩父宮ラグビー場。日本選手権のファイナルを兼ねたトップリーグの決勝で3連覇に挑むも、待っていたのは厳しい現実だった。パワフルな海外出身者との1対1で差し込まれ、本来おこないたかった鋭い出足の防御は遂行しきれなかった。
「単純に、自分たちがディフェンスをしている時に待つディフェンスをしてしまった。そこでゲインを切られて前に出られない状況を作ってしまった。1トライ目を取られたあたりから『ちゃんとしっかり出よう』という話にはなったんですけど、その後もちゃんとできてはいなかった」
本職のFBで先発の松島は、こう振り返った。攻めてもフェーズを重ねるなかでのミスが目立ったとあり、落胆した様子だった。
「攻撃のポッドなどの精度が高く、こっちの精度は…。80分を通して自分たちのラグビーをやれた時間は1分もなかった。神戸製鋼のプレッシャーに負けた感じです」
10点差を追う前半37分には、自陣22メートルエリアでキックを試みるも、対するHOの有田隆平にチャージされてそのままトライを許した。直後のゴール成功もあり、スコアは5−22と広がった。この時、周囲の選手から「裏に(ゴロキックを)転がすオプション」を発動するよう言われながら「それは違うな」とロングキックを試みた。一瞬の迷いが、有田の好プレーを引き出してしまったと言える。
「簡単なミスで、単純にチームの士気が下がった」
悪循環を断ち切れなかった。
(文:向 風見也)