ラグビーリパブリック

骨折していたのに再三突進。神戸製鋼トム・フランクリン、優勝への「魂」。

2018.12.16

トム・フランクリン。今季ベストフィフティーンに選出された(撮影:松本かおり)

 神戸製鋼のウェイン・スミス総監督は、「チーム内の魂が素晴らしい」と言った。
「きょうの勝ちは特別でした。選手が2人、骨折したまま試合をしてくれました。チームには魂があるということです。本当に特別でした」
 12月15日、東京・秩父宮ラグビー場でトップリーグの決勝に挑んでいた。2連覇中のサントリーを55−5と圧倒して15シーズンぶりに優勝するのだが、骨を折ったままグラウンドに立っていた戦士が2人もいたようだ。
 その1人は、トム・フランクリンだった。
 今季新加入のフランクリンは、ニュージーランド出身の28歳。身長200センチ、体重115キロという恵まれたサイズと豊かな仕事量を誇り、20歳以下ニュージーランド代表、マオリ・オールブラックスへの選出歴を持つ。ハイランダーズの一員として国際リーグのスーパーラグビーでもプレーしており、神戸製鋼でもLOとして空中戦と肉弾戦を支えてきた。
 激しいシーズンのさなか、フランクリンは右手首と左の肋骨を折っていた。8日の準決勝は欠場。ところがこの日は「チームのために何でもしたいと思っていた」と、先発フル出場を果たした。
 ただ出ていただけではない。序盤からラインブレイクを繰り返し、後半13分に独走トライを決めた。攻撃で前進した距離を表すゲインメーターは75メートル、ボールを持った回数を示すボールキャリーは20回をマーク。いずれもこの日のチーム内で2番目によい数字となった。
 守ってもタックル回数は7回。ボール保持率63パーセントと守備機会の少なかった試合にあっては、十分の結果と言えそうだ。
「レベルが違うんですかね。スーパーラグビーでずっと出ていますし」とは、共同主将でFLの前川鐘平。当の本人はにこやかに、こう話すだけだ。
「我々のゲームプランは素晴らしかった。それをよくできた。皆、素晴らしいプレーができた。やりがいがあった」
 スミスの言う「魂」は、赤いジャージィの背番号5に確かに宿った。
(文:向 風見也)
Exit mobile version