接点で食い込んだ成蹊大FW。少しの差を積み重ねて競り勝った。
(撮影/松本かおり)
日体大LOミキロニ・リサラ。140キロの巨体で前に出て、明学大防御をこじ開けた。
(撮影/松本かおり)
80分間、7点以上の差がつくことは一度もなかった。
12月9日、熊谷ラグビー場Bで関東大学対抗戦のA-B入替戦がおこなわれ、A-8位の成蹊大とB-1位の立大が熱戦を演じた。最終スコアは19-12。逆転勝ちだった。
毎年、この舞台で顔を合わせては同様の熱戦を繰り返している両チーム。今季で4年連続の対戦だ。2015年度シーズンこそ45-8と、その年Bグループ(1位)だった成蹊大が圧勝したが、昨年は29-26、一昨年は25-17と立大が迫っていた。
今季こそ。
Bグループでの7戦すべてを危なげなく勝ってきた立大の決意は固かった。今季の成蹊大は青学大に12-21と迫った以外は大敗続きだったから、自信もあった。
試合は立ち上がりの20分、互いの22メートルライン間での攻防が続いた。
先手をとったのは立大。23分、敵陣ゴール前でスクラムを得ると圧力をかけ続ける。最後はボールを動かし、FB床田聖悟がインゴールに入った。
コンバージョンも決まり、チャレンジャーが7-0と先を走る展開。しかし、成蹊大も前半終盤に相手反則から立大陣に侵入し攻め立てる。ハーフタイム直前、スクラムからNO8原島航佑がサイドを突き、FWが続く。HO古市龍馬主将がトライを決め、CTB濱慧悟のキックも成功し、7-7と追いついた。
成蹊大HO古市龍馬主将が「立教のバックスはうまかった」と言うように、攻め手は濃紺のジャージーの方が多かった。スクラムも強かった。タックルもよくする。
しかし、後半を制したのは黒地×胸の赤ラインの方だった。
ハーフタイム直前の勢いそのまま、成蹊大はよく前に出て立大の反則を誘った。後半8分、立大ゴール前のスクラムから右に攻めた後、FWが殺到する。LO藤井洋行の勝ち越しトライ+濱のコンバージョンで14-7とした。
立大に力があるのは後半15分のアタックでも分かった。
その直前、押し気味に試合を進めていた成蹊大がバックスのサインプレーでオブストラクション。立大はPKで成蹊大陣に入ると、ラインアウトからモール。左に大きく展開し、WTB山口航貴がトライを決めて2点差に迫る。
ただ、何度も揺れた天秤を、成蹊大は泥臭く自分たちの方に傾けさせた。
結果的に勝負を決めた後半21分のトライは、立大のラインアウトからの攻撃をタックルでターンオーバー。そこから攻め、つなぎ、古市主将がインゴール右中間に飛び込んだものだ(19-12)。
その後も最後まで激しい攻防が続いたが、スコアは動かぬまま試合は終わった。
戦い終えて両校のキャプテンは言った。
「前半最後のトライが大きかった。あれで試合に出ている選手も、応援の部員たちも声が出るようになった。自分たちのラグビーを最後まで信じ切れた」(成蹊大・古市主将)
立大のSH山本大旗主将は「特に後半、接点で相手に食い込まれてしまった。そういう苦しい状況になったから反則をしてしまいました。そこで我慢し切れず、規律を守れなかったのはキャプテンである自分のせい。日頃からもっと厳しい環境を作れなかった」と自分を責めた。
第1試合では、A-7位の日体大がB-2位の明学大を74-7と圧倒して1部残留を決めた。
明学大はスクラムで押し込み、接点で何度もターンオーバーするなど、鍛え込んできたものをいろんな場面で見せた。BKもフロントスリーが息の合ったプレーでよく仕掛ける。前半は7-24と食い下がった。
しかし、ミスがことごとく失点に結びついたのが痛かった。CTB紀伊瑶太朗主将は「順目順目に攻めていく途中でミスが出てしまった」と話し、前がかりになったところで切り返されたときの対応策まで手が回らなかったことを悔やんだ。
日体大は、今季から加わったLOミキロニ・リサラのパワーやSOハラトア・ヴァイレアの仕掛けを活かして、前へ前へと攻め続けた。
ゲームキャプテンを務めたCTB安城怜は、「前半はいつもと違ったことをやってミスも出たが、後半は修正できた。プレッシャーをかけ続けることで相手のミスを誘い、そこからスコアできて波に乗った」。
絶対に負けられない試合でチームを勝利に導き、安堵の笑顔を見せた。