サントリー戦ではトライを決めた。U20日本代表、ジュニア・ジャパンの経験はある。
世界で戦いたい。(撮影/松本かおり)
トップリーグ2連覇中の王者を追い詰めた。
12月1日に秩父宮ラグビー場でおこなわれた同リーグ総合順位決定戦、1位〜8位トーナメントの1回戦。サントリーに冷や汗をかかせたのがクボタだった。
前半を7-25とリードされるも、後半は19-3と支配する。
26-28の惜敗だった。
今季は開幕から2連敗スタートも、その後のリーグ戦で5連勝、カップ戦も3連勝と、充実の足どりを見せたクボタ。シーズンの深まりとともに、パワフルなFWが試合の流れをつかむ戦い方が安定感を増していただけに、サントリーを苦しめると予想する向きも多かった。
敗れはしたがチームの成長を証明した80分に、フラン・ルディケ ヘッドコーチも「勝つチャンスはあった。誇りに思う」と選手たちを称えた。
僅かに手が届かなかったことは悔しいけれど、王者と渡り合い、自信を深めた選手たち。FL末永健雄(すえなが・たけお)もそのひとり。
「最近の試合で入りが悪かったので、そこを意識して臨みました。それなのに立ち上がりが悪かったのは残念です。1対1で前に出られると、ああなってしまう。でも、自分たちはやれる、精神面も含めてどこにも負けない自信は持っていたので、後半はしっかり戦えました」
残る総合順位決定戦2試合に勝ちたいと、自信を見せた。
サントリー戦の前半35分にトライを奪ったほか、鋭い出足の攻守を見せ続けた末永は、チームが好調である理由を「全員の競争」と話す。
「ジェッツとマリーンズ。試合メンバーと、それ以外のメンバーがふたつのチームに分かれてお互いにやり合っています。マリーンズのメンバーのやる気が凄い。そんな姿勢が勝つために必要と全員が理解し、チームの文化になった。自分だっていつ出られなくなるか分からないという空気が、いま、ある」
各ポジションの争いも激しい。末永は、バックロー内のセレクションを勝ち抜いてピッチに立っている。
今季が2年目の24歳は、ルーキーイヤーに全15試合に出場してチーム新人王に選ばれたのに続き、今季も進化中。リーグ戦の全7試合で7番を背負い、神戸製鋼を破った神戸製鋼戦でも同ポジションでチームに貢献した。
LOの金昊範とルアン・ボタが197センチと205センチ。6番のピーター・ラピース・ラブスカフニが189センチでNO8ドゥエイン・フェルミューレンが193センチと大男に囲まれ、178センチ、95キロの体躯は余計に小さく見える。しかし、本人はサイズを気にしない。
「大きい人の下に入り込むプレーが得意です。相手に当たらせず、自分から前に出てタックルする。相手より先に仕掛ける」
小よく大を制すスピリットを持つ7番は、サントリー戦での自らのトライシーンを、「他の(FW)7人が相手を越えていって自分がスコアする。それぞれが役目を果たしたものでした」と振り返った。
かしいヤングラガーズ(福岡)で5歳のときに始めたラグビー。福岡高校時代は高校日本代表に選ばれたが、同志社大学時代は日本一になる目標は達成できず、選手としてもチームとしても、頂点に立つ夢はまだ果たせていない。
チームの勝利に最大限貢献する先に日本代表、サンウルブズ入りを見据える男は、「もちろんそこを狙いたいし、いまのスコッドに入れなければ、その次の機会に向かうだけ」と湧き出る意欲を隠さない。サントリーには181センチ、95キロと、自分とほぼ同じサイズながら日本代表に選ばれている西川征克がいることを引き合いに出し、「スタートから出てほしかった。やり合いたかった」と勝ち気なところも見せた。
南アフリカ代表のフェルミューレンなど、ワールドクラスのラグビーと向き合う態度、周囲に与える影響力は「凄く勉強になるし刺激を受けている」と、成長を助けてくれるものは身の回りにたくさんある。
チームはトップリーグの今季王者となるチャンスは逃したけれど、加入2年目のFLには、まだ自分の存在をアピールする場が残されている。